ナルコレプシーとは?
大事な場面で強い眠気に襲われる人は要注意! ただの眠気ではなく、病気が潜んでいるかもしれません
ナルコレプシーの特徴は、日中耐え難い眠気が長期間、毎日起こることや、笑ったり驚いたときなどに体の力が急に抜けてしまう「情動脱力発作」が起きること。どちらの症状も会社や学校で起こると周りの人から驚かれ、怠けていると誤解されてしまうこともあります。
ナルコレプシーの有病率は人種によって違い、欧米では比較的少なく1万人に2~4人程度ですが、日本では1万人に16人~18人の割合で、全国には20万人も患者さんがいます。決してまれな病気ではないのです。『麻雀放浪記』で有名な直木賞作家の阿佐田哲也(色川武大)さんも、このナルコレプシーと闘っていたことで知られています。
多くの場合は思春期を中心に10歳代から症状が始まり、発生頻度に男女差はありません。患者さんの4.3%~7.4%は家族の中に同じ病気を持っている人がいますが、その他の大多数の人は単独で発症しています。
ナルコレプシーの原因
一卵性双生児でも片方だけが発症することも。遺伝子だけが原因ではないのです
■特定の遺伝子とストレス
白血球の血液型が関係しているとも言われています。血液型というと、普通ABO型とRh型を指すと思いますが、これらは赤血球の血液型。白血球にも別の血液型があり、「ヒト白血球抗原(HLA)」と言います。白血球の血液型は多くの遺伝性疾患との関連が研究されています。
日本人のナルコレプシー患者さんでは、ほぼ全員がある特定のタイプのHLAを持っていることが分かっています。ただし、日本人全体の12~38%が同じタイプのHLAなので、この遺伝子を持っていれば必ずナルコレプシーになるということでもありません。
遺伝子だけで病気になるとすれば、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児では療法がナルコレプシーを発症することになります。ところが実際には、双子が両方とも発症する確率は30%程度。最近の研究では、遺伝的な素因を持った人にストレスが加わることでナルコレプシーを発症しやすくなることが分かってきました。
■たんぱく質「オレキシンA」の不足
また、情動脱力発作を伴う典型的なナルコレプシー患者さんの約90%で、脳脊髄液中のたんぱく質の1つである「オレキシンA」の濃度が低いことが知られています。オレキシン神経は、脳の中で覚醒系の神経ネットワークや筋肉の働きをコントロールする神経ネットワークと深い関係があります。
このことからナルコレプシーは、オレキシンの濃度が低いためオレキシン神経の働きが障害され、睡眠発作や情動脱力発作を起こすのではないかと考えられています。