将来に備え、親世帯は車椅子対応を考えておくことを、
「同居と介護(3)車椅子対応に備える」でおすすめしましたが、今回は、実際に住宅内を車椅子で移動して、生活しやすさを確かめてみました。
1.部屋から廊下へ出てみる
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【写真1-1】位置を考えておかないとドアが車椅子にぶつかってしまいます |
まず、車椅子に乗ったまま、部屋から廊下に出てみます。出入り口はごく普通の片開きドアです。
ふだん、立ってドアを開けるときは、手前に引いたドアに身体がぶつからないよう、無意識に身をかわしているのですが、車椅子の場合は、開ける前にドアの動きををよく考えて車椅子を止めないと、ドアにぶつかってしまいます【写真1-1】。車椅子の位置が、ドアの正面より右に寄っているのがお分かりいただけるでしょうか。
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【写真1-2】ドアを全開するためには、手をめいっぱい伸ばす必要があります |
またこの車椅子の位置でドアを全開しようとすると、手をいっぱいまで伸ばす必要がありました【写真1-2】。
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【写真1-3】通り抜けるだけなら問題ありません |
廊下の幅は標準的な約80cmのもの(いわゆる半間幅)、入り口の幅は73 cm、車椅子の幅は約56cmで、通り抜けるだけなら問題ありません【写真1-3】。しかし、ドアの厚みなどで有効幅が狭くなり、直角に曲がりながら廊下に出るのはまさにぎりぎりという感じです。車庫入れ名人のような技術を要求されるので、高齢者が自走で曲がるのはかなりストレスになると思います。
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【写真1-4】振り返った姿勢でドアを閉める必要があります |
ドアを閉めるときも、レバーに手の届く範囲で一度車椅子を止め、振り返ってドアを引きながら出ていく必要があり、このようなひねった姿勢での車椅子操作はかなり難しいと感じました【写真1-4】。
介助者がいれば、ドアの開閉をまかせられ、曲がる際も車椅子を横にずらすなどの小回りが利くため、自走の場合より楽に出ることができそうです。
2.廊下からトイレへ向かう
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【写真2-1】まっずぐ走るだけなら余裕があります |
今度は、トイレへ向かってみます。80cm幅の廊下は、まっすぐ走る時には少し余裕があります【写真2-1】。
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【写真2-2】直角の曲がり角は問題なし |
この住宅では、トイレに向かうまでに直角の曲がり角がありますが、余裕はないものの、建具の枠などで狭くなることもなく、曲がることはできました【写真2-2】。
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【写真2-3】トイレのドアも、まっすぐなら通過可能 |
曲がり角の突き当たりがトイレです。ドア幅は廊下幅一杯のもので、部屋の出入り口と同様、枠やドアの厚みで有効幅が狭くなるものの、まっすぐになら充分に通過できます【写真2-3】。
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【写真2-4】入室後、身体を180度回転させることが必要になります |
ただし、トイレ内に、便器の正面に向かい合う形で入室するため、便器に座るためには、車椅子からいったん立ち上がって、手すりなどにつかまり、身体を180度回転させなければなりません【写真2-4】。
足腰が弱くなって車椅子に乗っている状態を考えると、かなり不安定な動作になります。
このように、便器の正面にドアがあるプランが実際の間取りには多いのですが、側面にドアがある設計にできれば、便器に座るときの身体の回転は90度でよく、車椅子から便座への移動の負担が減るように感じました。
また、方向転換できるほどトイレを広くすることは住宅ではほとんど不可能に近く、トイレから出るときは方向転換できる場所までバックで下がってくることになります。トイレの近くに方向転換できるような幅1.4m程度のスペースを設けることで、使い勝手は大きく改善するでしょう。
さらに、キッチンや2階にも移動してみました>次ページ