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【連載】説得と交渉の営業心理学 第4回 結論を言わない暗示的説得

疑い深い人や理屈っぽい人を説得するのは、通常の人を説得する場合に比べて困難だ。このようなタイプの人には、結論を言わない「暗示的説得」が効果的だ。

執筆者:鹿俣 之信

疑い深い人や理屈っぽい人を説得する

疑い深い人や理屈っぽい人を説得するのは、通常の人を説得する場合に比べて困難です。疑い深い人は、何を聞いても「何かウラがあるに違いない」と疑ってかかるし、理屈っぽい人は、他人の意見を聞かず、何事も自分で考えて論理的に判断しようとします。

このようなタイプの人を、無理に説得しようとすると、相手は「説得されてたまるか」と抵抗し、考えや態度を硬化させてしまいます。彼らをうまく説得するには、ちょっとしたポイントがあります。

明示的説得と暗示的説得

説得するときに、理由を述べた後に結論を述べ、相手のとるべき態度や行動を指示する説得方法を「明示的説得」といいます。それに対して、理由を述べた後にあえて結論を述べず、相手のとるべき態度や行動を相手自身に判断させる説得方法を「暗示的説得」といいます。

明示的説得は、結論を示すので論旨がはっきりしますが、主張を押し付けられているように感じます。暗示的説得は、押付けがましさは感じませんが、論旨があいまいになります。

これまでに行なわれてきた心理学実験の結果によると、他人に相談することの多い人、自分の判断に自信のない人、情緒的に判断する人、疑い深くない人、知的レベルの低い人には、明示的説得が効果的であることが分かっています。逆に、他人に相談したりしない人、自分の判断に自信のある人、論理的に判断する人、疑い深い人、知的レベルの高い人には、暗示的説得が効果的です。

自分で出した結論には逆らえない

疑い深い人や理屈っぽい人を説得するには、結論はあえて言わないほうがよいでしょう。結論を導き出すのに必要な情報だけを伝え、自分で結論を出させるわけです。そうすると、相手は「自分で判断して決めた」と思い込み、自分で出した結論によって自己説得し、考えや態度を変化させるのです。

人は自分が一度行った考え方や行動に固執して、一貫しようとする傾向があります(一貫性の原理)。そのため、他人から明示的に説得されて意見を変えた場合よりも、自分で出した結論によって意見を変えた場合のほうが、説得効果が高くなります。自分で導き出した結論を否定するのは困難なことです。

セールスの現場では

セールスの現場では、決定権を持つキーマンがこのタイプの場合に、特に気を使う必要があります。あなたの提案がどんなに素晴らしいものでも、結論を押し付けてしまっては彼らの心は動きません。彼らがその結論にたどり着けるように、私たちは誘導しなければなりません。「自分で考えて決めたのだ」と思わせることが肝心なのです。


【連載】説得と交渉の営業心理学
第1回 二度目は断れない
第2回 拒否させて譲歩する
第3回 一面呈示と両面呈示
第4回 結論を言わない暗示的説得

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