これまでに ≪市街化区域と市街化調整区域の違いを知る≫ や ≪市街化調整区域の土地でも家は建つ!?≫ で「市街化調整区域」についての解説をしていますが、実際に購入する際の注意点などに関するご質問をいただくことも少なくありません。
他のwebサイトや書籍などをみても、市街化調整区域については「住宅を建てることができない地域」として一言で片付けられていることが多いでしょう。
また、不動産公正取引協議会による「不動産の表示に関する公正競争規約」でも、すでに開発許可を受けている場合など一定のものを除き「市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません」と不動産広告に明示することが義務付けられています。
ところが、実際には市街化調整区域内で販売されている新築住宅、中古住宅、土地なども意外と多いのです。
そこで今回は、市街化調整区域内で住宅(または住宅を建築する目的の土地)を購入するときに注意するべき実践的なポイントを、改めてまとめておくことにしましょう。
なお、住宅以外(店舗や事務所、工場、その他)の目的で市街化調整区域内の土地を購入するときには、ここでの解説と異なる部分がありますからご注意ください。
市街化調整区域内の土地を購入するとき
まわりが田や畑ばかりの更地なら、新たな建築は難しい
このような土地のときには、開発許可に関する書面(開発許可書、工事完了検査済証など)を確認することができればたいていは大丈夫です。
また、開発許可に合わせて、市街化調整区域でありながら用途地域が指定されるケースもあるほか、建ぺい率や容積率など、一定の制限が加わることも多いため、それらの内容もよく確認するようにしましょう。
問題が生じやすいのは、単体の更地または古家付きの土地のときです。
このような土地では、都市計画法による許可および建築基準法による建築確認が受けられるかどうかによって大きな違いが生じます。住宅を建築することができない土地を買ってしまったら、一般の人には何ら使いみちがありません。
そこで売買契約書には「◯○年○月○日までに(買主名義による)建築確認を受けることができなければ白紙解除とする」という旨の特約条項を盛り込んでもらうことが必要になります。
建築確認を受けることの前提として都市計画法による許可も得ることになりますが、単純に都市計画法による許可だけだと、目的とする建物(用途、構造、規模など)が建てられるという保証はないため、建築確認を特約の要件とするわけです。
したがって、売買契約を締結したらすみやかに建築確認の申請ができるように、事前に準備をしておかなければなりません。当然ながら設計費用や建築確認申請費用などがかかるものの、どのみち必要となる費用ですから、支払い時期が少し早くなるだけと割り切ることです。
しかし、もし許可などが受けられなければ、すべてが無駄な出費ともなりかねないでしょう。売主がその費用を負担してくれるなら話は別ですが……。
そのため、場合によっては売買契約を締結するよりも前の段階で、建築士など第三者に依頼をして「許可を受けられる可能性が高い土地なのか、それとも許可が難しい土地なのか」(明確な判断はできないケースも多い)を調べてもらうことも考えるようにするべきです。その時点である程度の調査費用がかかっても仕方ありません。
市街化調整区域内の新築住宅を購入するとき
土地の場合と同じように、大規模な開発分譲物件で関係書類が揃っているなら、さほど問題はありません。それ以外の物件のときには、「都市計画法の許可に関する書面」および「建築確認済証」、さらに完成済みの物件であれば建築工事に関する「検査済証」をしっかりと確認します。
もっとも、都市計画法の許可がなければ建築確認は受けられないため、売買契約前の検討段階では、少なくとも「建築確認済証」と「検査済証」が確認できれば大丈夫でしょう。
新築のときから、建て替えを視野に入れたチェックが必要
もし、違反建築などの事由で検査済証が取得できない場合は、住宅ローンの審査などに影響が出るばかりでなく、将来の建て替え時に支障が出ることにもなりかねません。
なお、自治体によって市街化調整区域内での建売住宅を認めている場合と認めていない場合があります。もし、建売住宅が認められないところで目的を偽って建築されたものが売られれば、買主が想定外の損害を受けることもあるでしょう。
遅くとも売買契約を締結するときまでには、都市計画法による許可の内容を詳しく確認するとともに、場合によっては自治体の窓口で事前に確認をしておくことも必要です。
また、都市計画法による許可や建築確認をきちんと受けて建てられた住宅でも、用途の変更(住宅の一部を店舗や事務所にするなど)や将来の増改築に制限が加わるなど、市街化区域内の住宅とは勝手が違う部分もあります。
具体的な制限の内容はそれぞれの自治体によって異なりますから、やはり事前に細かく確認しておくことが欠かせません。
市街化調整区域内の中古住宅を購入するとき
中古住宅の場合には、将来の建て替えが認められるかどうかが重要なポイントになるでしょう。ただし、土地や新築住宅の場合と同じように、開発許可を受けた大規模分譲地などに建っている中古住宅であれば、それが違反建築物でないかぎり大きな問題はありません。中古住宅のときは、将来に建て替えができるかどうか、自治体の規定を詳細にチェック
いずれにしても、市街化調整区域内の中古住宅のときには過去の書類をしっかりと確認するようにします。
ただし、2001(平成13)年5月18日以前(またはその後の一定の猶予期間内)に建てられた住宅では、都市計画法の許可に関する書類がなく、建築確認に関する書類だけの場合もあります。
それらの書類がない中古住宅の場合には十分な注意が必要です。更地を購入するときと同じように建築確認を売買契約の条件(特約条項)にすればよいのですが、しばらく建て替える予定もないのに設計費用や建築確認申請費用などを負担することは現実的でありません。
そのため、将来の建て替えなどができるのか、それぞれの自治体で定められた市街化調整区域内での許可基準などを詳細に確認する必要がある半面、どうしてもあいまいさ、不確実さが残ってしまうケースも多いでしょう。
市街化調整区域では、一般的に土地や新築住宅を購入するときよりも、中古住宅を購入するときのほうがリスクが大きいといえます。
また、建物の現況と登記された内容が一致しているかどうかにも注意しなければなりません。建物の種類(用途)、構造、床面積などが登記内容と異なる場合は、たとえ建て替えが認められても思わぬ制限(現在よりもだいぶ小さな建物しか認められないなど)を受けることがあります。
なお、市街化調整区域内の土地に何らかの建物が建っていれば「既得権がある」といった認識を持った人も少なからずいるようですが、それほど単純な話ではありません。
いま現在の建物が、もともと違法に建てられたものであれば建て替えが認められない場合も多いほか、さまざまな条件をクリアすることが必要です。
自治体によっては「昭和○年○月○日時点ですでに建物があったこと」「昭和○年○月○日以前から、土地の登記地目が宅地だったこと」「平成○年○月○日以降に分筆をしていないこと」などをはじめとして、さまざまな許可基準が設けられているケースもあります。
また、許可の対象が従来からの所有者やその関係者に限られたり、農林漁業を営む人が自ら住む目的で建てた住宅(都市計画法による許可が不要)が売りに出されたときなどには、その購入者の範囲が制限されたりすることもあるようです。
市街化調整区域の規定を自分で確認してみることも必要
ひとくちに市街化調整区域といっても、個々の土地がもつ条件や立地する自治体などによって、その取り扱いは千差万別です。いずれにしても、それぞれの自治体における規定をよく確認しなければならないわけですが、市街化調整区域内での住宅建築などについてはたいへん複雑な規定(規定自体は単純かもしれませんが、ややこしくて分かりづらい面や判断しづらい面が多いもの)となっています。
建て替えが認められるかどうかの判断が簡単にできないことも多い
市街化調整区域内の住宅を購入しようとするとき、その媒介をする不動産業者が市街化調整区域内の物件の取り扱いに慣れていればよいのですが、そうでなければ重要事項説明のときに規定の内容が買主へうまく伝えられているのかどうか、大いに疑念も残ります。
できれば自分で自治体の担当窓口へ行き、納得ができるまで十分な説明を受けたうえで購入するかどうかの判断をするようにしたいのですが、ある程度の予備知識がないと分りづらい内容ばかりかもしれません。
物件によっては売主業者または媒介をする不動産業者ではなく、公正な第三者に調べてもらったうえでじっくりと説明を受けることを検討してください。
かつては市街化調整区域内の土地が「多目的用地」「格安土地」などとして広告され(不当表示ですが)、住宅を建てられるものと勘違いした買主との間でトラブルになるケースも少なからずあったようです。
たしかに建物を建てないかぎりは、駐車場、資材置き場、家庭菜園、花壇、庭の代わり、個人用の運動場など、多目的に使えますが……。
最近はそのような事例を聞くこともなかったのですが、都市部での地価上昇が顕著な時期には、またおかしな広告が出てくるかもしれません。しかし、自分の思い込みだけで判断せずに、しっかりと確認するように心掛ければ、このような事態に巻き込まれることはないでしょう。
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