nanacoとWAONの真剣勝負
セブン&アイホールディングスの独自電子マネー「nanaco」のサービスが4月23日から東京地区のセブンイレブン1500店でスタートし、5月28日までには全国34都道府県のセブンイレブンでも使えるようになります。それに対抗するように、イオングループも4月27日から独自電子マネー「WAON」を立ち上げ、関東地区のジャスコなどの店舗で利用できるようにします。いよいよ流通業界にも電子マネーの波が押し寄せてきたという感じです。レジ待ちの40秒が1秒に短縮される
まず、これらの電子マネーに共通するのは、いずれもソニーが開発した非接触IC「フェリカ」を使っていることです。非接触ですから、カードを読取機にかざすだけで、レジで40秒かかっていた支払い時間(セブンイレブン)が、わずか1秒たらずに短縮します。これまで長い行列を作って待つのがコンビニやスーパーの常識でしたが、その常識が崩れて、レジから行列がなくなり、スピーディーな決済ができるようになるのです。さらに、事業者側にとっては、電子マネーの導入で現金のハンドリングコストが軽減されるため、事業コストの削減に繋がると期待されています。
また、どちらもプリペイド型ですから、最初にチャージしておけば、何度でも利用できます。nanacoは最大2万9999円、WAONは最大2万円まで1000円単位でチャージすることができます。チャージは店内のレジや店内に設置されたチャージ機などで行います。
nanaco人気で品切れの恐れはないのか
では、最初にセブン&アイホールディングスのnanacoについてみてみましょう。nanacoは初年度1000万枚の発行を目指しています。それを実現するためには各店舗が年間1000枚を獲得しなければなりません。結構な数ですが、これを心配する声もあります。PASMOの売り切れにも見られるように人気がでるとあっというまに在庫が切れるからです。1店1日3枚づつ発行がつづけば、ギリギリ間に合いますが、それ以上のペースで発行すると足りなくなります。これから1カ月間の様子をみないと何ともいえませんが、nanacoはPASMOのようにはならないでしょう。というのは、カードと同時にケータイ(nanacoモバイル)での会員受け付けも行っているため、カードが足りなくなったら、ケータイで登録してくださいと言えばいいわけですから。この点がPASMOとの違いです。nanaco導入は顧客満足度を高めるため
それにしてもセブン&アイホールディングスはなぜnanacoをスタートさせたのでしょうか。その理由は、コンビニ業界の状況に関係しています。最近のコンビニ業界は、店舗数拡大も頭打ちとなり、成熟期に入ったといわれています。セブンイレブンも上場以来初の営業減益を記録するなど苦戦しています。そうした中で同社は顧客満足度をあげようと、活発化してきた電子マネーのすべての規格を受け入れて、「売り逃し」を防ぐ戦略をとろうとしています。nanacoの導入に合わせて新しく導入されたPOSレジは、あらかじめ複数の電子マネーに対応するだけのシステムが組み込まれており、いつでもどの規格にも対応する体制が取られています。
nanacoポイントのすべて
さらに、電子マネーにインセンティブをつけて優良顧客を囲い込もうという戦略も打ち出しています。それがnanacoポイントです。nanacoは、利用金額100円ごとに1ポイントつき、それを1円単位で買い物に使うことができます。1%というポイント付与率は、高率です(一般のクレジットカードは0.5%であり、その2倍)。そして、大手流通が直接電子マネーを発行し、ポイントを付与するのは本邦初であり、ポイント還元コストを含めてその成否を各方面が注目しています。ローカルではなく全国一律のポイントサービス
それがどんなに画期的なことなのか、nanacoのライバルとなるEdyと比較してみると、よく分かります。Edyもポイントサービスを実践していますが、提携企業に限ったローカルなポイントサービスです。例えば、ANAと提携して、そのマイレージ会員になるとEdy利用で、200円で1マイル提供するというプログラムがあります。サントリー系のプロントでは、会員になると、1500円以上のEdy利用で1割引きになります。提携先に原資を負担してもらい、それぞれに適したポイントサービスを提供しているのです。それに対してnanacoは全国のセブンイレブン1万1700店で販売するほとんどの商品で一律1%のポイントを付与し、その原資はすべて本部が負担します。フランチャイジーが負担するわけではないので、その費用は莫大なものとなりますが、セブンイレブンがこのような思い切ったポイントサービスを実施できるのも、営業利益率10%と体力に自信があり、余裕があるからこそできるのです。