つまり、厚生年金基金では代行部分と呼ばれる「国の厚生年金の一部」と、加算部分(+α部分ともいう)と呼ばれる「会社独自の積立部分」の2階建てになっています。
今回、50%カット、というのは、この「国の厚生年金の一部」の問題なのです。
■厚生年金基金で「代行返上」の動きが加速中
どうしてこんなややこしい制度を作ったかはここでは省略します。一言だけ説明しておけば、会社のほうで取り置きして積み立てておくことが、「当時は会社にとって得だった」ということです。
ところが、国に代わって国の年金の一部を会社が責任を持つというのは現在においては、会社にとって負担になってしまいました。なぜなら、ある社員が22歳で入社して、85歳で亡くなるとしたら、積立と運用について38年、年金の給付について25年、合計で63年も会社が面倒を見なくてはいけないからです。しかも「国の年金の一部」ですから、国の制度に準じて支払わなければならず、会社の都合でカットするわけにもいきません。
しかもこの積立不足は、企業会計上、情報開示が求められ、会社の株価にも影響します。積立不足を補てんすれば、会社の利益は減ってしまうことになります。耐えきれない企業からは「もう厚生年金の部分は国に返したい」という要望が相次ぎました。
これを受けて、厚生労働省では「代行返上」という制度を認めることにしました。この「国の厚生年金の一部」に係る積立部分については国に返却してもよいということです。
すると、意外なことに、大手企業を中心に続々と返上を希望する企業が名乗りを上げるようになりました。ざっと名前を挙げるだけでも、日立、トヨタ自動車、旭化成、東芝、NEC、シャープ、ビクター、いすゞ、セコム、キユーピー、花王、コニカ、三井物産、グンゼ・・・・。いずれも誰もが知っている有名企業ばかりです。
銀行や金融機関で社員を対象に実施していた厚生年金基金でも代行返上希望が相次いでいます。すでに184もの厚生年金基金が代行返上を表明しており、全体の1割を超えました。正確な数字は不明ですが、今後200万人以上の企業年金に影響が出そうな見込みになっています。
この「代行返上」で厚生年金基金からの年金は50%近くがオフになってしまうとしたら? 大騒ぎになりそうですが?