男性シングル編:「年金勝ち組」のストーリー
僕の名前は高野昭典(仮名)、独身だ。35歳のとき、僕は「一生、このままひとりかも」と思った。いい縁に巡り会わなかったこともあるけれど、一人暮らしが居心地よかったというのもある。負け惜しみだろ、なんて結婚した友人にはからかわれるけど。あまり年収も高いほうじゃなかったけれど、結婚や子どもにお金を掛けずにすんだ分、自分のためにお金を貯めることができた。最後はお金があれば一人でなんとか生きていけるからね。手取りの15%くらいはずっと貯めていたんじゃないかな。気が付くと結構大きな金額になっていた。
45歳のとき、15年の短期でローンを組んで家を買った。国の年金水準には家賃は含まれていないということを知って、老後住む家だけは確保しておこうと思ったからだ。とはいえ、貯金の一部を取り崩したりしたんで、借りた額は1000万円くらい。しかも、実際には7年で返してしまった。やっぱりあまり長く借金していたくなかったから。
貯めていたお金の3分の1は、毎年証券口座に移して資産運用もしていた。僕はETFをメインに運用していたけれど、気に入った会社は株主になってずいぶん株主優待などで楽しませてもらったな。株価が下がった時期もあったけど、全体的には大きくプラスになった。年平均にしても8%くらいは増やせたんじゃないかな。積み立てた額の2倍以上にはなったよ。
定年退職後に、転機が訪れた。仲の良い知人に勧められて沖縄に家を買ってのんびり暮らすことにしたんだ。東京のマンションを売って少しお金を足したら、沖縄に手頃な広さの家が手に入った。ここには2007年くらいに開発された、年金生活者だけで暮らしている街がある。ほとんどの人が同年齢ということもあって、友人も増えた。配偶者を亡くし一人暮らししている人も多いため、シングルの僕でもあまり気にならないのはありがたいね。
沖縄は物価も安いし、ぼくはあまり無駄づかいしないほうなんで生活費は年金収入だけでなんとかなる。ちょっと贅沢したいときは少しずつ財産を取り崩している。誰に遺産を残すわけでもないから、葬式代だけ保険で確保して、死ぬまでに使い切ってもいいかなと思っている。今のペースだと、毎月10万円ずつ使っても、30年以上はもつ予定だ。一生シングル、というのも意外にいい人生だったと思うよ。
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