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マネープランで「自分探し」は禁止?

「自分探し」は人生の一時期において重要なテーマですが、自分探しとマネープランは相性が悪いかもしれません。そんな話を書いてみたいと思います。「マネープランでは自分探しは禁止!」

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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「自分探し」はムダなのか?

自分探し、というのは人生のひとつのテーマです。人格形成期においては欠かせないものであることは間違いありません。

よく「中二病(厨2病とも書く)」というものが嘲笑の対象となります。中学二年前後の若者が、何かに夢中になって周囲を見失ったりすることが滑稽だというわけです(もう少しオトナの人が中2レベルの発言をしたときの揶揄に使われることもあります)。

 
マネープランと自分探し

マネープランと自分探し




その「恥ずかしさ」はオトナ目線ではその通りかもしれませんが、当人にとっては実はとても大事なことです。後から振り返ってみれば恥ずかしいエピソードも、その人の人格形成に役立っていたりするものです。

中学二年生に限らず、社会人であっても、駆け出しの頃に向こう見ずな態度で上司に突っかかってみたり、おかしいことにおかしいと素直な疑問を口に出してみたり、ハードワークで無茶をしたりする経験はとても重要です。

冷静になるのは結構ですが、シニカルさにのみ陥ることは慎むべきだと思います(筆者も、大学時分あるいは20代の自分の青さには赤面しますが、当時はそれでよかったと思います)。

とはいえ、「永遠の自分探し」というものが危うさを秘めていることは間違いありません。「自分だけの何か」というものはそう簡単に見つかるものではありませんし、スーパーマンは1億人もいないわけです。結局のところ自分は自分で折り合いをつけていくしかないのです。

あるワークショップに参加して街角写真を撮るにあたって、「被写体に自分探しをすることは禁止だ」という説明がありました。「自分」はそんなところにはみつからないし、とにかくいろいろ撮ることを通じて結果として何かのメッセージが出てくるものだ、というわけです。実にその通りだと思いました。

本日は、FPとして「資産運用と自分探し」について少し考えてみたいと思います。キーワードは「資産運用に自分探しは禁止!?です。
 

自分探しはマネープランに必要か

「自分探し」はマネープランにおいて必要でしょうか?

確かにマネープランにおいて「自分」を見つけておくことは必要です。お金の運用や管理はお金を増やすことが目的ではありません。「何か自分がやりたいことを実現する」という目的が別にあって、そのために必要なお金を調達するプロセスでしかないからです。

たとえば、3000万円を60歳までに作ろう、というのは、3000万円作ることが目的ではありません。3000万円あれば、老後の安心がひとまず確保でき、長いセカンドライフを楽しんで暮らす、という大切な目的が実現できるから、お金を貯めるわけです。

自分が何をやりたいと考えているか、そのためにいくらくらいお金が必要なのか、厳密に算定することは困難ですし、未来のことですからあまり意味はありません。しかし、それなりに考えておくことはとても大切です。「自分」なくしてマネープランはないのです。(ただし、どうしても分からない場合は、とりあえずお金を貯める、という方法もあります)

目的もなしに、お金を貯め、増やそうとすると、ただお金を増やすことのみが目的となってしまいます。本来不要なまでのお金を貯めるために今の生活や幸せを削り取ることはおかしな話です。また、お金を増やすこと自体に幸せを見つけてしまうと、ほとんど強迫観念に駆られたようにお金を増やすことしか考えられなくなってしまいます。ぜひ、「何のためにお金を貯め、増やすか」を考えるようにしてください。

もう一度繰り返します。お金を増やすことそのものは目的ではありません。
であれば、お金を増やすことそのものに、「自分」が存在する必要はない、ということもいえます。
「自分らしいお金の増やし方」とか「お金を増やしていた中に自分がみつかる」ということは関係がないわけです。それはあくまで、手段に過ぎないわけですから。

まとめてみると「マネープランを考えるために“自分”は必要」だけれど「マネープランそのものに“自分”を投影する必要はない」ということです。

この点、ちょっとわかりにくいので、次に、「自分探しをマネープランや運用に持ち込むとうまくいかない」例をご紹介しましょう。
 

資産運用に自分探しを投影させる危険

マネープランや資産形成そのものは、「自分探し」とは無縁であるべき、という話をしました。このページでは危険な資産運用、危険なマネープランを考えてみます。

(運用で自分探し禁止!その1)
「自分らしい」商品を選ぶ、あるいは銘柄選びをする、という考えに囚われることは危険です。資産運用の本来の目的は無理なく上手に増やすということであって、自分探しとは関係ありません。注意しましょう。似たようなパターンで、良い銘柄を自分が見極めるとか、企業を自分が育てるとか、社会的に許されざる企業を選別するとか、予断を資産運用に加味することも危険です。ほとんどの場合、ムダな執着を呼び、判断を鈍らせ、運用成果を下げてしまいます。

(運用で自分探し禁止!その2)
また、資産運用をすることそのものに生き甲斐を感じるようなマネープランもあまりオススメしません。自分の資産価値がリアルタイムで変動する瞬間にワクワクすることを運用の目的としてしまう人がいます。気持ちはよく分かります(資産運用は実はとても刺激的で楽しい経験です!)。しかし、その喜びに溺れて本来の「リスクと上手につきあって、お金を増やす」を忘れ、高いリスクを取ってはいけません。そのお金で何をしたいか、を大切にしてください。

(運用で自分探し禁止!その3)
また、上手な資産運用をできる自分を探す、というような無謀なチャレンジもやめておいたほうが賢明です。デイトレーダーになれば、仕事をしなくてもすむ、と思っている人は多いようですが、仮にそうなれたらそれは「デイトレーダーという個人事業主」になるだけのことで、仕事を辞めるわけではありません。また、軽い気持ちで才能探しをしても、ほとんどの場合、その試みは失敗し、お金をなくすだけの結果になるでしょう。あなたが資産運用のプロやカリスマに化ける可能性は限りなく低いのが事実であり、リスクを抑える運用方法や投資比率の決定を大切にしてください。

(運用で自分探し禁止!その4)
運用の成果や失敗を自分の成果や判断ミスであるかのように、背負いすぎるのも良くないパターンのひとつでしょう。どんなに銘柄を選んだり、売買タイミングを選んだところで、結局のところ、投資の成果を決めるのは、市場全体の評価(必ずしも合理的であるとは限りません)であり、当該企業の活動次第であり、世界の景気動向次第です。結果は自分が負わなければなりませんが、判断の当否を自分の責任として抱え込む必要はないのです。

運用と「自分探し」という妙なテーマで今回はコラムを書いてみました。個人的に思うのは「自分発見」は「自分の中にしかない」という当たり前の結論です。外部に自分探しを求めて、無用の損失を被ることのないようにしてください。

堅実に増えたお金が、あなたの夢や目的を叶えることで、結果として「こうありたい自分」が実現できた、となればいいですね。がんばってみてください。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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