たしかにWindowsの巨大な普及率によって成立するビジネスモデルがあるからこそ、ソフトウェア市場が活性化し、それによってMacも恩恵を受けている部分も少なくない。
しかし、Mac OS Xはほんとうにデザインや操作性だけのOSなのだろうか?
OSの機能性として重要なのは、API(Application Program Interface)とよばれる部分だ。ウインドウのデザインやスクロールバー、印刷機能やネットワークへの接続など、OSが持っている基本機能を組み合わせることで、アプリケーションはグラフィックやテキストを作り出している。
そして、これらの基本機能の完成度が高ければ高いほど、アプリケーションを作るときの手間がかからない。同じ作業期間でアプリケーションを作る場合、基本的な部分に手間がかからないほうが、本質的な部分の品質を高めることに時間を多く費やせるため、結果的に品質のよいアプリケーションとなる。
じつは、Mac OS XをこういったOSの基本機能の集まりとして評価した場合、機能的に見てもWindowsより優れているところがたくさんあるのだ。
今回は、そんな基本機能についてお話ししよう。
コモンダイアログの機能性
Mac OS Xで動く複数のアプリケーションは、異なるメーカーのものでも共通している点が多いと感じたことはないだろうか?特にフォントの選択、カラーの選択(カラーパレット)、ファイルの選択、保存先の指定、プリントするときのダイアログは共通のものか、比較的似たデザインであることが非常に多い。
●Mac OS X上で共通のダイアログ(一部)
これらはすべてMac OS Xに内蔵されているコモン(共通の)ダイアログと呼ばれるもの。OSに最初から内蔵されている基本機能で、これらを使うことでデベロッパーにとってはアプリケーションを作るときのコストを削減することができるし、エンドユーザーにとっても異なるアプリケーション間で操作性が統一されて、登録ブックマークやアイテムなどを共有できるなどメリットは多い。
もちろん、コモンダイアログはWindowsにもあり、例えば「メモ帳」や「ワードパッド」「ペイント」で表示されるファイル選択、フォント選択、カラー選択のダイアログはOSのコモンダイアログを使ったものだ。
中でも代表的なダイアログである「ファイル選択ダイアログ」「カラーパレット」の機能性をMac OS XとWindowsVistaで比較してみよう。
●Mac OS Xのファイル選択ダイアログとWindowsVistaのファイル選択ダイアログの機能比較
操作性などは無視して、機能だけを比較すると以下のような違いがある。Mac OS Xでは「テキストエディット」、WindowsVistaでは「メモ帳」「ワードパッド」から開くダイアログで比較した。
ファイル選択ダイアログ | 前回フォルダ位置をアプリごとに記憶 | フォルダ履歴を記憶 | 検索機能 | サムネイル表示 | Finder(エクスプローラ)が表示している場所へ移動※ |
Mac OS X | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
WindowsVista | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
※Mac OSに古くからある操作で、Finderで表示されているファイル/フォルダをファイル選択ダイアログ上にドロップすると、その場所に移動する。WindowsVistaではエクスプローラ上でアドレスをコピーし、ファイル名の場所へペーストして移動する方法を使う。
Mac OS XとWindowsのファイル選択ダイアログ |
両OSの機能面の違いはそれほどないが、Windowsのファイル選択ダイアログはときどき期待通りのフォルダを開いてくれないことがある。理由は、ダイアログを使って開く/保存を行わなければ前回位置として履歴に残らないため。
つまりファイルをダブルクリックやドラッグ&ドロップで開いた後でファイル選択ダイアログを開くとフォルダの場所は古いままなのだ。
対するMac OS Xのファイルダイアログでは、ダブルクリックやドラッグ&ドロップを含む、そのアプリケーションで扱ったすべてのフォルダ、ファイルを前回の履歴として覚えるため、次回選択時に期待通りのフォルダが開く。非常に微妙な違いだが、作業中に感じるストレスが全然違う。
ちなみに、Mac OS X Leopardのファイル選択ダイアログにはiPhoto、iMovie、iTunesのライブラリが直接参照できるようになっている。ブログでポッドキャストや写真を使う人には便利だろう。