温泉/温泉を楽しもう

今年の温泉ベスト10 <2007年 対談後編>(3ページ目)

今年の温泉ベスト10!日本を代表する温泉研究家、郡司勇(温泉レポート)と、藤田聡(日本の名湯)両ガイドによる、年末恒例の特別対談!互いの温泉観も含め、今年も奥深い対談となりました。温泉好き必見です!

執筆者:郡司 勇

温泉の癒しと「攻め」の兼ね合い

つぼ湯1
足元湧出の小さな浴槽のつぼ湯
<藤田> 温泉が好きで、多数の温泉を経験したい為に、温泉で癒されるというよりも、むしろ頑張ってしまうことがあります。これは温泉マニアと言われる人に多いパターンだと思うのですが、温泉を「攻める」という表現が似合うかもしれません。

その一方で、長湯したり、泊まったりすることで、より一層理解が深まる場合もあると思うのですが、郡司さんは、その辺の兼ね合いを、どのように考えていますか?

<郡司> 私は温泉に行くとあまり長湯をしません。湯の感触は一瞬で分かってしまうので、急速に興味が薄れてしまいます。温泉の個性や泉質が分かると、次の温泉に行きたくなってしまい、結局ゆっくりと温泉を楽しむことが性格的に出来ないでいます。

宿泊しても短時間の入浴を3回ほどするだけです。温泉自体を満喫するより、温泉の使われ方や個性の観察、研究に行っているという感じになってしまっています。そんな廻り方のために、どうしても攻めるというほうが多い温泉巡りになることが多いです。しかし最近は再訪の温泉巡りを増やし、ややゆっくりと廻るようにしています。

しかし稀に、大変気に入ってしまった温泉に出会うと、そこだけは長湯をします。また急にお願いして、宿泊したりします。だからといって、湯の理解がいっそう深まるということは少ないです。温泉はほんとうに一期一会で、最初の感触が記憶に刷り込まれることが、ほとんどと言ってよいでしょう。私の場合ほとんどは短時間の入浴です。

<藤田> 私も基本的には、温泉は瞬間芸術だと思っており、浴場を見た瞬間、かけ湯した瞬間、湯に浸かった瞬間に、どれだけ感動出来るかが最も重要だと思っています。

それにしても、長湯しても湯の理解が深まることは無いと断言されるとは、流石は一瞬で温泉の全てを把握される郡司さんですね。その素早さと正確性は凄みを感じる程で、いつも本当に驚いてしまいます。私を含めた普通の人には、到底到達しえない領域の話と思います。

私の場合、感覚がまだまだ鈍いせいもあるのでしょうが、長湯した結果、体が温まるか否かや、すべすべ感が増すのか、減少するのか。温泉の臭気を継続して感知出来るのか、鼻が慣れやすく温泉臭をすぐに感知しなくなるのかなど、長湯して初めて分かる要素もあるように思っています。また、温泉は総合評価なので、総合的な情報を得るのにも、ある一定の時間がかかると思います。

たとえば、いくら長湯しても体が温まらない温泉の場合、通常はマイナス要素ですが、総合的な判断によって、いくらでも長湯出来る温泉として、プラスに評価出来る場合もあると思うのです。そうした判断には、総合的な情報収集が必要であり、時間がかかるように思います。まあ、私の行動が遅いだけなのかもしれないのですが(笑)。

とはいえ私自身、若い頃は経験も少ないので、多数の温泉を経験することを優先して、一箇所で長湯することは避けて、先を急ぐ傾向がありました。温泉が好きで頻繁に旅行をするので、また近いうちに再訪出来るという油断もありました。
つぼゆ2
湯の峰温泉つぼ湯は白濁している


しかし、実際には、日本全国には無数の名湯があるので、年に一回再訪出来れば良い方です。とても再訪したいのに、何年も再訪出来ていない温泉地も数多いのです。そうした温泉が、再度訪れる前に廃業したり、リニューアルによって以前の良さを失ってしまうことが何度も発生し、とても悲しい経験をして来ました。そうした経験から、今では、温泉の良さを存分に楽しむことを最優先にしています。常に、次回いつ頃来れるか考え、数年は来れないと思えば、その分、散々長湯します。

本当に良いと思えば泊まったり、日帰り施設の場合は、近くに泊まって翌日にも再度行く場合もあります。特に北海道や、九州などの遠隔地の場合、再度来る時間や交通費を考えれば、当初の予定を大幅に変更してでも、存分に堪能した方が、最終的には得だと考えるようになりました。

ただ、例外もあります。熱川温泉の露天風呂に来ていた方と話をした所、定年退職後に夫婦での温泉めぐりを楽しんでいるとのことでした。話を聞いていると、若い温泉マニアと全く同じ行動パターンで、まさに温泉を「攻める」という感じでした。お年を召されても、そうした情熱を温泉に傾けられることは、とても素晴らしいことだと思いました。そういう意味では「攻める」べき時も、確かにあると思います。

→次ページでは、温泉オーナーとの対話についてです!>>>
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 7
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます