先日、某女性誌の撮影でモデルがらみのコペンの撮影をするべく打ち合わせをしていた。話もほとんど終わりかけたころ、20代後半の女性スタイリストが声を上げた。「えっ、これ軽自動車なんですか?」
彼女のこの言葉にすべてが凝縮されていると言っていいだろう。そうそう、いまある軽自動車とは「小さく」て「実用的」で「どこかちゃちっぽく」、「足がわりだからいっか」と「妥協」が見え隠れするイメージがあるからだ。
しかし。コペンはそのキャッチコピーに「最小のボディに最大の夢を」と掲げ、まさにそういうクルマに仕上がった。スタイリストの彼女が「軽自動車じゃない」と思うのも無理はない。軽自動車という税金的に優遇されたかわりに課せられた規格のなかで、それはそれは「こんなクルマがあったらな……しかも安く」という夢を叶えてくれているのである。
小さなボディ。それを覆うスタイルは、前後左右上下ナナメ、どこから見ても死角なしのソツのない美しさである。お碗をかぶせたようなカタチなれど、ヘッドライトを含めたライト類のバランスのよさによって甘さはない。切り立つシャープなボディラインがなくても、スポーティさは表現できるものだと感心させられる。特に後ろに2本出たシルバーのエキパイ(排気管ね)は、ああ、こんなところまできっちり仕上げてあって……と、感激さえする(だって、ここに細くてしょぼいパイプがついてたらがっかりだし)。
オープンへの道はふたとおり。電動で開くアクティブトップか、屋根をかっぽりはずすデタッチャブルトップのどちらかを選択。まあ、はずすとその分軽くなって走りがよくなる、というツウはいるけれど、置き場所や雨や、そのときの気分で開け閉めが簡単にできるという利点を考えるなら、アクティブトップのチョイスが妥当であろう。
そしてATとMTの選択に迫られる。そりゃMTの方がかきーんと走るにはふさわしい。しかしATとて、マニュアルモードがついているからギアを選びながら軽快に走れる点に於いてはひけをとらない。絶対MT派はMTを。多少お気楽派はATを自由に選んでいいと思う。と、実におおらかなサジェスチョンができるのも、アクティブトップもデタッチャブルトップも、MTもATもすべて同じ価格だからである。なに~? MTとATが同じ価格だと? と、いままで安くMTを購入していたユーザーは怒ると思う。しかし、これで怒るのはナンセンスだ。確かに部品ひとつを比べれば価格差はある。でも「楽しい走り」に価格差はない。安さだけでMTを選ぶような人はいまさらいないだろう。しかもコペンのような遊びの王道を行くようなクルマを買おうという人の中で。