台湾の南、「高雄」は台北に次いで台湾第二の都市です。海に面しており、工業地帯としても発展してるため、国際港湾としての高雄港も有名です。一方で、高雄にはまだまだ厚い人情も、昔の港町風情も残っています。
そんな高雄を舞台にした映画「深海 Blue Cha-Cha」が、今夏(2006年)8月19日(土)から日本でロードショー公開されます。台湾の役者たち、高雄の風景、映画のラストで登場する台湾伝統芸能人形劇「布袋戲」などなど、映画からさまざまな台湾を感じ取れるはず。今回はそんな台湾映画「深海 Blue Cha-Cha」を紹介します。
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映画「深海 Blue Cha-Cha」のストーリー
(C)Green Light Film Ltd. |
「頭の中のスイッチが入ったら自分では切れないの」―――心に病を抱えるアユーは、飲まないと危ないと医者に言われ、欠かさず薬を飲み続けている。行く宛てのない彼女は、刑務所で“面倒を見てくれる”と言ったアンの言葉だけを頼りに、彼女を訪ねてきた。あまり景気が良くないにも関わらず、アンは福の神だからと言って家に迎え入れ、自らの経営するクラブでアユーに仕事を世話する。クラブではほの暗い照明の中、チャチャのリズムで女たちが踊っている。アユーの美しさに惹かれたクラブの客チェン(レオン・ダイ)が、ひと月分の給料より高い金額でアユーを店の外に連れ出す。会うのはいいけど好きになってはいけないというアンのアドバイスにも関わらず、アユーはチェンに夢中になった。おもちゃの輸出で最近羽振りがいい彼は、お金を使うのは厭わない。赤い花柄の美しいコートをプレゼントし、今夜も会いに来ると言い残す。その言葉を信じて待ち続けるアユー。しかしいつまでも彼は現れない。気付けばコップが割れるまで洗いものをし、何度も携帯を鳴らしてはなぜ来ないのかと責め立てた。夜、店に来たチェンに縋りつき、思い詰めたアユーが手を挙げた。アユーを庇ってチェンを怒鳴ったアンは、その夜、上客をひとり失くす。
(C)Green Light Film Ltd.
アンの世話で、アユーは工場で簡単な仕事に就くことになった。単調な流れ作業をこなす仕事で、ひとりでデスクに向かう。作業指導の先輩シャオハオ(リー・ウェイ)は、話しかけても俯いたまま振り向かない態度にちょっと腹を立てつつ、美しいアユーに興味を持った。環境に不慣れだろうと何くれと話しかけるシャオハオ。アユーは彼に少しずつ心を開く。シャオハオが家まで送ってくれた日、別れた後アンが就職祝いにくれた携帯にメールが届いた。“僕を信じて。すべてうまくいくから シャオハオ”。シャオハオの家に遊びに行った帰り、アユーは一緒に住んでもいいかと尋ねる。シャオハオが気軽に了承したとは思いもせずに、恋人の家へ引っ越すことをアンに告げる。アンは2階の窓から道路に向って、無言で次々とアユーの荷物を抛り出した。
(C)Green Light Film Ltd.
アユーはいつも一緒にいたくて、シャオハオが友達と遊ぶ時も、工場で昼食を食べる時も、夕食時も、ずっと傍らにいた。のべつシャオハオの愛を確認し、きっかけがあると自分を卑下し、悲しくなって殻に閉じこもる。自分の時間が全く無くなったシャオハオは、徐々に疎ましく思い始め、ついに家を出て行った。アユーはアンのところへ戻るが、もう居場所はなかった。ごめんなさいとだけ告げ立ち去ると、シャオハオの部屋へ戻り大量の薬を飲んだ。シャオハオに発見され大事に至らなかったアユーは、再びアンの家に身を寄せる。会いにきたシャオハオにアンがアユーの罪状を告げる。シャオハオは、再び彼女を家へ連れて帰ることはしなかった。
海辺で布袋戲の一座が舞台を広げている。ひとりの人形使いの前でアユーが何かに引き寄せられたかのように楽しそうに見入っている。彼も病気をかかえ、家族に見守られて生きているひとりだった。興行が終わると一座は、船に乗り次の町へ移動を始めた。その船を埠頭の端まで走って追いかけ、海に向って大声で叫ぶアンとアユー。その声を飲み込み、掻き消してしまう目の前の海は、大きくて真っ青である…。
(資料はグアパ・グアポより提供のものを許可を得て転載)
キャスト、監督の紹介、映画の概要
(C)Green Light Film Ltd. |
(資料はグアパ・グアポより提供のものを許可を得て転載)
「深海 Blue Cha-Cha」 公式サイト:http://www.shinkaimovie.com/
2005年/台湾映画/108分/北京語/ヴィスタ(1:1/85)/ドルビーSRD 日本語字幕:風間綾平/字幕監修:伊東武司 (C) Green Light Film Ltd.
アユー(阿玉):ターシー・スー(蘇慧倫)
シャオハオ(小豪):リー・ウェイ(李威)
アン(安姐):ルー・イーチン(陸?静)
チエン(陳桑):レオン・ダイ(戴立忍)
エグゼクティブプロデューサー・監督・脚本:チェン・ウェンタン(鄭文堂)
脚本:チェン・チンフォン(鄭静芬)
音楽:シンシン・リー(李欣芸) ほか
提供 コミックリズ?エスピーオー?レゾナント・コミュニケーション?ワコー
配給 コミックリズ?ワコー
問合せ グアパ・グアポ(東京都中央区銀座1-21-7 GNビル2F/TEL03-3538-7172)
<上映予定の映画館>
海、そこに注ぐ愛河、高雄の街、人、縁、そして布袋戲。生活に密着した「海」が、愛情の深さを表したり、癒しになり、未来へ続く場所になり、人や土地に恵みをもたらしてくれたり。そんな映像を見ながら、感じたこと---人を愛すると見境がわからなくなってしまう憂鬱病を抱えるアユーはきっとどこかにいるだろうし、それを自分だけでは背負いきれないと感じてしまうシャオハオ、痛みがわかって放っておけない、けど甘やかすこともしないアンだって存在しそうだし、どこにでもありそうなストーリーと思うのですが、「海」と、行きつ戻りつ踊る台湾に根付いたダンス「チャチャ」は、知らず知らずのうちに台湾の人の心のよりどころとなっているのかな、ということです。刹那的な若者、いろんな人を見ている百戦錬磨の人、つきあう他人との距離がはかれない人、心に病を抱えた人…、孤独や放浪の中で生きていくしかない人々の心のよりどころとは何か、が描かれている現代の台湾映画ではないでしょうか。
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