ー そのトンボ珠の作り方を教えてください。
Mさん : ガラス製のものは、元になるガラスに色ガラスを溶かして焼き付けます。ガラス製の特徴は色が鮮やかなことです。一方、陶製のものは特別な材料を繰り返し繰り返し釜で焼き上げて作ります。この作り方によって色に落ち着きが出てシックな感じになります。
ー いつ頃から、排湾族や魯凱族の間で用いられてきたのですか?
Mさん : 17世紀ころ、外から通商のために通貨代わりに入ってきたものではないか、というのが定説です。どこから入ってきたのかはわかっていません。排湾族にトンボ珠が定着した理由は、彼らには「貴族と平民」というはっきりとした身分制度があったためか、富や高貴の象徴として珍重されたようです。トンボ珠は先祖代々受け継がれているんです。
ー自分たちで作り始めた時期は割と遅いとか?
Mさん : 約30年ほどまえに、民族としての誇りを無くしつつあった排湾族が、象徴とも言えるトンボ珠を身につけることで民族の誇りを取り戻そうとしたことがきっかけです。それから、試行錯誤しながら、現在のトンボ珠に至っています。世界各地にトンボ珠がありますが、排湾族や魯凱族のものはそれぞれに「歴史(意味や祈り)」があるので珍しいものなのです。
ー 「先住民族ドットコム」オリジナルのアクセサリーはありますか?
Mさん : トンボ珠それ自体だけでもキレイなのですが、日本の状況を見て、携帯電話のストラップを作りました(これは、日本全国のソニープラザで店頭販売されています。詳細はこちら)。これからもいろんなオリジナルグッズを作ってもらう予定です。
ー そうですよね。こういった民族色の強いグッズって、普段のファッションや生活にワンポイントとして取り入れられる、というのが現代に受けますよね。
Mさん : 僕なんか全身ですけど(笑)
ー 何気なく、ではないですね。どうだ! って言ってる(笑) 他には?
Mさん : 排湾族のウチャスさんという彫刻家に依頼して、絵を描いてもらっています。これをTシャツにプリントして日本に紹介しようと考えています。まだ試行段階ですが、他にもオリジナルアクセサリーや雑貨も紹介していきます。
ー 台湾の先住民の社会や経済方面にも役立てると?
Mさん : 決して商業主義だけではなく、僕のライフワークでもあります。彼らが故郷に留まって、自分たちの文化や社会を伝承できるような、健全な職の創出に一役かえればと願っています。手工芸品などを製作することで生活の基盤ができていくという状況が現実なんです。僕だけが儲けようとすれば、せっかくの彼らとの関係が絶たれてしまう、これは違うと思っています。先住民として、「人」として魅力的なので関係を崩すのはできません。
ー 最後に一言。
Mさん : 台湾先住民の独自の文化に触れて、その楽しさや美しさ、意味を味わってください。その文化に親しみを感じたら、「人」にも興味を持ってみてください。そのきっかけをお手伝いしていきます。
●先住民族ドットコム http://senjyuminzoku.com
<参考図書>
「搖滾祖霊 ー台湾原住民藝術家群像ー」(藝術家出版社、1998年)
注
※1 台湾先住民:台湾では、先住民のことを「原住民」という。”はじめから住んでいる”という意味が明確で、実際に通じる言い方は「原住民」。
台湾の先住民は大きく分類して10種族。阿美(アミ)族、泰雅(タイヤル)族、排湾(パイワン)族、卑南(プユマ)族、魯凱(ルカイ)族、賽夏(サイシャット)族、布農(ブヌン)族、雅美(ヤミ)族(もしくは達悟族)、邵(サオ)族、鄒(ツオウ)族。全体でも台湾総人口の2%に満たない。分布は、花蓮~台東に阿美族、台東近辺に卑南族、台東~屏東に排湾族、屏東に魯凱族、中央山岳周辺に布農族、烏來や太魯閣などに泰雅族、新竹周辺に賽夏族、蘭嶼島に雅美族。
※2 撒古流(サクリュウ):屏東縣三地門という排湾(パイワン)族の村出身。先住民アーティストの先駆け。彼の作品は、「漂流木(台北市羅斯福路三段316巷9弄4号 電話02-2365-7413)」という先住民が集まるライブハウス&パブで見られる。