台湾では、”日本”がブーム。日本発流行ファッションや音楽、キャラクターグッズ、TVゲーム、ドラマ、日本語から中国語約されたマンガなどに興味を持って、自分の生活に取り入れる人のことを「哈日族(発音:ハーリィズゥ)」と言います。日本にかぶれている人のことを揶揄して言うときにも哈日族は使われますが、日本語を勉強していたり日本に興味があれば哈日族と言えます。※1
その日本語も生活に密着しています。日本統治時代(1895~1945)から台湾語や先住民の言葉の中に残る日本語(例:運ちゃん、きもち、おじさん、おばさんなど)の他に、最近は「~の(中国語の”的”)」をそのまま用いて”我の店(意味:私のお店)”とすることが日常化しています。
また、広告手段として、日本語が普通に使われているのも台湾。日本人が聞くと違和感のある日本語が媒体手段となっています(例:ちょとモノかてきて→ちょっと買い物に行ってくれる? の意味)。
テレビ番組でも日本語教室があったり、NHK衛生放送の他に日本のドラマやクイズ番組などを専門に放送しているチャンネルも3チャンネル(緯來日本台、國興衛視、JET TV)、日本のプロレスばかり放送しているチャンネル(新朝日、Z)もあります。日常生活の中に、中国語、台湾語、客家語(中国福健などから台湾に渡って来た一部族の言葉)、英語、日本語が同居しているのが台湾なのです。
若者が日本の流行りを追うだけが日本好きなのではありません。日本統治時代に、日本語教育を受けた方々、つまり現在の60代以上の世代です。こうした方々は、今でも流暢な日本語を、しかも美しく正しい表現で話されます。軍歌や古い演歌、唱歌を歌い、日本語の本を読み、文章を書きます。特に、先住民のお年寄りは日本語を話したくて、村を訪れるだけで大歓迎してくれます。「私の日本語名は、千代子。千代子おばあさんと呼んでください。さあ、どうぞ、食べなさい。」と、初めてお会いしても家に招待してもてなしてくれます。※2
その昔は闘争精神旺盛だった先住民なので、今でも先のプロレス番組を見るのが好きなのです。ジャイアント馬場氏が亡くなったときは、多くの方が悲しんだのも事実です。プロレス番組がなくならないのもこんな理由なのです。
日本人として日本の教育勅語を唱え、日本の教育を受けてきたお年寄り達は、日本を憎むわけでも蔑むわけでもなく、日本人として生きた時代を思い出し、単に日本語を話したいという気持ちが強いだけなのです。こうした人たちこそ、日本の歴史や文化までを理解する真の哈日族ではないでしょうか。
※1 「哈」:垂涎の意味の台湾語。すごく好きな時に用いる。
※2 先住民と日本語:台湾に9族いる先住民同士は、言語が異なるため、交流する手段がなかったが、日本人の統治によって日本語を介して部族同士の交流がなされた。台湾語や中国語を話せず、部族の言葉しかできない人は今でも日本語を使って他部族と交流していたりする。