日本に向かう飛行機の中で
「わたしとしたことが、あんな男に騙されるなんて。なにがアレックスよ。だいたい、杉本が悪いのよ。あいつが、ロンドンで心の洗濯してきてください、なんて言って余計なことするから、こんな目に遭うんじゃない。免税店で買い物三昧して、少しは気が晴れたけど、あいつにはブランド物なんてあげないんだから。そうよ、チャリティショップで買った、あの安物のペンダントで十分だわ」
酔いはさらに回っていく。
「赤ワイン、もう一杯お願い」
キャビンアテンダントが 3 杯目のワインをサーブしにきたとき、美咲は深い眠りについていた。そのまま、成田で揺り起こされるまで、目覚めることはなかった。
【おしまい】