「リビング・ヒストリー ヒラリー・ロダム・クリントン自伝」ヒラリー・ロダム・クリントン (著), 酒井 洋子 (翻訳) |
●ヒラリーの苦悩
アメリカでは、日本のように”浮気は男の甲斐性だ”なんて大っぴらに言われることは、まずない。夫の浮気を許すという女性は日本に比べると、少ない気がする。夫を許さないまま、さっさと離婚してしまうのが普通だ。
というのも夫の浮気が発覚すれば、妻のほうが離婚には有利。離婚すれば、夫の財産を分与されるし、離婚後の生活費も義務づけられているから、女性だけでも暮らしていけるのだ。だったら別れないすべはない。
ただし、金銭的に不自由しないとはいえ、夫に裏切られたという精神的苦痛がお金で癒されるわけもない。
そんなイージーな離婚社会の中にあるのに、精神的苦痛を乗り越え、夫の浮気を克服した女性が、ヒラリー・クリントン上院議員。
彼女の著書で半生をつづった「リビング・ヒストリー」は発売と同時に爆発的に売れた。余談だが、ハーレムの書店にヒラリーがサイン会に来た時には私も行ったけど、ものすごい人だかり。売り切れ寸前の本を、やっと一冊手にすることができた。サインは、列の長さから考えても2時間待ちだというので諦めて帰った。
ハーレムでヒラリーの本を抱えるブラックの女性と会話を交わしたが、
もちろん話題は巷と同じ、夫のビル・クリントン元大統領とモニカ・ルインスキーの不倫問題の裏側。50代の上品な女性だったが、「既に、その部分を読んだのだけど、とても美しい言葉で心情が表現されていたわ」と語った。
●不倫はプライベートな問題
著書の後半で、クリントン元大統領の裏切りを知ったときの彼女の様子や、1998年12月の連邦議会下院によるクリントン元大統領の弾劾と、翌年2月の上院による無罪判決の間の苦悩がつづられている。
国民の支持があったからこそ、クリントン元大統領は弾劾を免れたといわれているが、背後に、ヒラリーの公でみせる毅然とした態度が不倫問題をプライベートな問題として大衆の心を動かしたともいえる。
学生時代から20年以上も夫婦以上の関係を保ってきた二人。それなのにクリントン元大統領の不倫は、おおっぴらにメディアに取り上げられ、コメディアンから笑いのネタにまで使われるほど。彼らにプライバシーなど許されなかった。
プライベートな問題をここまで公開された彼女の苦悩は、人並みではなかったはずだ。
それでも、民主党の党員集会で「夫の行為を好ましく思っていないが、それと弾劾は結びつくものではない。」それはあくまでプライベートな問題であるとスピーチするのだった。
そして彼女が決意を固めた言葉とは>>