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旅館料金はなぜ高い?「泊食分離」の必要性

知られていない一泊二食料金の勝手な都合。消費者は部屋と食事を別々に選びたい!

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

「泊食分離プラン」花盛りの理由

舘山寺温泉
舘山寺温泉では、旅館に泊まり温泉街で夕食が取れるプランを実験的に販売中。本場のうなぎが美味しそう!

今冬、あちこちの温泉で「旅館に泊まり、街で食事ができる」プランが企画されています。もっと知られていれば、売れるとは思うんですが・・・。
北海道の阿寒湖温泉と、佐渡両津温泉では、11月と12月、あっという間に終わってしまいました。阿寒湖では二軒、佐渡では「佐渡國味くらべ」と銘打ち九軒で実施していました。
それでも、現在、作並温泉(宮城県)では「そと湯そと飯」企画として07年3月31日まで五軒で実施中。ただし、温泉街に食事処がないので、相互の旅館同士で食事を食べあえる方式です。
また、舘山寺温泉(静岡県)では、「きょうのごはんはドッチ!」という企画名で、07年2月28日まで五軒の旅館と五軒の料理店が参加して、そと飯ができる商品を販売中です。
さらに、平戸温泉(長崎県)でも、「自由に食べてよかプラン」として、07年2月18日まで、七軒の旅館・民宿と市内の料理店やお土産店で使えるクーポン券を販売し、夕食を外でも食べられる方式を実験しています。
以上は、国土交通省が主宰する泊食分離事業の実証実験として行われています。だから、3月までの年度内限定で控えめなのでしょうけれど、本番では、地元客中心のオフ期だけではなく、できるだけ通年でやっていただけると消費者の皆さんにも覚えてもらえると思います。
このほか、山代温泉(石川県)でも、「連泊宣言」と称して、温泉内全宿と料理店が参加して、「2泊以上の連泊客は、うち1泊を旅館で夕食を食べれば、後はそと飯OK」という企画を07年の3月~4月に実施予定です。
いずれも、なんで、こうした取組みを実施する(させられる?)かというと、これまで旅館の一泊二食制度と大規模化による囲い込みにより、温泉街は寂れ、かえって現代の(団体客ではなく個人で楽しみたい)消費者ニーズに合わなくなってきているということが、従前から問題視されているためです。
もともと、江戸時代後期の1805年、湯治宿の請願によって、伝馬役(税金)と引き換えに湯治宿でも一泊宿泊を認めると幕府がお触れを出すまでは、「温泉地は素泊まり料金(木賃)が基本で、滞在が原則」でした。
以後、貧しい農家から売られた飯盛女(湯女)の登場、歓楽街化、戦後の法人接待需要と、お客の囲い込み&男性天国と化した温泉地・温泉旅館が、ようやく200年ぶりに女性を含めた個人に解放されようとしているのだと思います。一泊二食囲い込みの料金制度を200年ぶりに改めるとなると、それは、現経営者にとっては一大事でしょう。
でも、利用者メリットも高いので、実験で終わることなく、どうせやるなら、じっくり時間をかけて、しっかりした制度を構築してからでもよいので、継続して実施して欲しいと思います(もちろん、議論・実験を始めるのは早い方が良い)。
こうした宿泊と食事を分けて料金を設定する手法を、業界では「泊食分離」と呼んでいます。利用者にとっては、もしかしたらどっちでもいい、と思われる問題かもしれませんけれど・・・。
ところで、旅館の一泊二食料金には重大な瑕疵があるのをご存じですか。それは、「部屋の広さや眺望と料理の内容は比例する」という、知らなかったでは済まされない大きな問題なのですが、皆さんは、いつも高いお部屋と高い料理を買って満足しているならそれで結構なのですが、そうでないなら、もう少し興味を持っていただけるかもしれません。
では、「泊食分離」をご説明しましょう。どうか最後までお付き合いください。
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