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きっと助手席のナビゲーターでさえ、そう言うかもしれない。
車がやっと通れる山道を行くこと40分。
村に行く路線のマイクロバスもあるが、一日に二便。
時折り、スーパーカブに野菜を積んだおばさんが通り過ぎるだけ。
深山幽谷のごとき山村の奥の奥に、その宿はあった。
オーベルジュ土佐山。
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高知は遠いなあ、と思っているうちが花。
いざ知ってしまった都会人がコアなリピーターになっている。
なぜ、良いのか。
それは「村人が愛する」宿だから。
地元高知のホテルが運営を受託しサービスにあたるが、
村人のオーベルジュに対する愛着と誇りは相当なものだ。
毎朝、村の女性たちが野の花を一部屋ごとに生けていく。
ダイニングの食卓には、村の名産が並ぶ。
隣接する売店「とんとんのお店」では美味しかったものを買って帰れるのも楽しい。
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つり橋を渡っていくヴィラの庭は和紙の原料になるミツマタ林。
土佐は、日本有数の和紙の産地だったことを思い出す。
清水の流れるアプローチからロビーに入ると
吹き抜けの空間と薪ストーブが出迎えてくれる。
入浴券の自動販売機が不思議だが、
日中、村の人たち用だとのこと。
村の皆さんはお客様が帰った後、そっと温泉を愉しみにきているのだ。