日本人の旅の系譜には大きく2つの流れがあります。
第一の流れは「伊勢参り型」。
一生に一度のハレの旅行で、社寺参拝を大義名分にした物見遊山を目的とし、時には「旅の恥は掻き捨て」とばかり羽目を外すこともある旅のスタイル。
第二の流れは「湯治型」。
日常の疲れを癒したり、疾病の治癒のため温泉に長期滞在、時には自炊しながら同好の仲間と交流し、心身の調整を図ることを目的とした旅のスタイル。
「伊勢参り型」で栄えた温泉地は、その名の通り、日光に「鬼怒川」、善光寺に「上山田」、弥彦神社には「弥彦・岩室」と社寺周辺も多く、花街の名残を残している温泉街も多くあります。こうした温泉地は、高度成長期には「接待や職場旅行」を吸収し、「他人の財布」需要で栄えました。今でも「えび・かに・牛肉・まぐろ」といった赤いハレの料理での「おもてなし」や、「お座敷」対応は得意です。
これに対し、「湯治型」は、東北の温泉地や九州の「由布院」「黒川」に代表されるような山間の田舎の温泉。豪華な食事や、時にはテレビもなく、他人の財布需要ではなく「自己投資需要」に支えられています。こうした湯治型の旅で、今新しい流れが生まれつつあります。それは「ネオ湯治」。
支持するのは、個人の時間や生き方を大切にした「働く女性」。そのステージは次の三種の神器を備えた湯治宿。
一.和を追求した心地よい空間
(畳敷きにベッドというタブーも超越)
二.旬の素材にこだわった
ジャパニーズキュイジーヌ
(脱・高カロリー宴会食)
三.湯を循環させない掛け流しの温泉
(塩素漬けの偽物温泉ではなく本物志向)
そんな宿が、FIGARO1月5/20日合併号やCOSMOPOLITAN2月号で紹介されています。
そのうち、冬にこそ行ってみたい東北の湯宿を3軒、ご紹介しましょう。