昨年から起きていた事件ですので、「なぜもっと早く解決(逮捕)できなかったんだ」とか「もっと早く公にして予防するべきだったのではないか」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。でも、それができない難しい問題がありました。
虐待の事実がないと告訴は難しい
動物の虐待は、主に虐待者の家庭内で行われます。ですので、実際に虐待しているところを目撃することはまずありません。虐待されたとしか思えないペットを見たり、飼い主の言動から想像したりして、虐待を推測することがほとんどでしょう。虐待の事実(証拠)がないと、告訴は難しいです。思い切って告訴しても、告訴した相手が虐待を否定した場合には証拠不十分で告訴が取り下げられてしまうかもしれません(法律用語にくわしくないので、用語の使い方を間違えているかもしれません。間違えていたらごめんなさい)。
また、虐待していると思ったものの、事実を確認してみたら虐待ではない場合もあります。たまたま、あなたが見たときにペットの水がなかっただけだったり、そのときの言葉遣いが悪かっただけだったりして、実際にはペットの管理は理想的に行っている人だったということもあります(「うちのペットはバカだから」などとペットに対して悪い言葉遣いをしていても、ものすごーくペットに愛情をそそいでいる飼い主さんは多くいますので、1度話したときの言葉遣いだけで判断するのはすごく危険です)。
今回の件も、虐待されたと思われる猫が動物病院に連れて来られるものの飼い主がやったという証拠はなく、また、常に怪我や事故の説明もしていたそうなので、告訴できるだけの証拠(根拠)はつかめない日々が続いていたようです。
公にすることの怖さ
動物の虐待については、時折テレビや雑誌などのマスメディアで報道されることがあります。報道することで「虐待していることはわかっている」と虐待している人に伝えることができますので、予防措置になるのかもしれません。けれども、報道されることで「自分の行為が注目されている」と虐待している人が感じてしまうおそれもあります。注目されることに喜びを感じてしまったら、虐待行為はエスカレートしてしまうかもしれません。予防するつもりで報道したのに悪化させてしまうおそれがあるのです。
虐待する人の気持ちが理解できれば、報道した方がいいのかどうか判断できるのかもしれません。でも、動物への虐待をどうにかしたいと考える人たちは、動物を虐待することなんて考え付かない人ばかりです。私自身何度も考えたことがあるのですが、どうして動物を虐待するのかはわかりません。わからないから、公にすることが予防になるのかどうか判断できず、聞かれるたびにいつも答えられずにいます。
もし動物への虐待を目撃してしまったならば、マスメディアへ連絡する前に警察や獣医師会、動物愛護団体などへ相談してください。また、インターネットの掲示板やブログに書くときは、あなたの書いた言葉を虐待している人が読んだらどう考えるだろうか考え、虐待がエスカレートすることのないように言葉を選んでください。