闘魚(ベタ)の特徴
闘魚とは、なにやら物騒な響きだが、見た目の美しさと激しい闘争性を併せ持つ「ベタ」またの名を「ランブルフィッシュ」とも呼ばれる魚の事である。その激しい闘争性から原産地のタイでは、賭けの対象として闘鶏ならぬ闘魚として人気が高く、またその美しさから多く愛好家を魅了して止まず、各地でその美を競うコンテスト、それに伴った品種改良が盛んに行なわれている。今回は、その様な対極の性質をもつベタについて紹介していきたい。
闘魚として有名なベタ
アナバス目ペロンティア科マクロポーダズ亜科
ベタ・スプレンデンス 学名:Betta splendens
(英名:ランブルフィッシュ Rumble Fish)
原産地:タイ、カンボジア
サイズ:7cm
先にも述べたがその気性は激しく、雄同士が出会うとどちらかが再起不能になるまで死闘を繰り広げることもしばしば。その美しい容姿からは想像がつかない程、性質は激烈を極める。他種に対してはそれ程でもないのだが、同種の雄を見かければそく臨戦体勢に。正に、“Fighting Fish”――闘魚――という名が相応しい。相手を威嚇する時に各鰭(ひれ)や鰓蓋(えらぶた)をこれでもか! と広げる様子は、数いる熱帯魚の中でも屈指の美しさ。それは、世界各国にこの魚を楽しむ為のクラブが存在し、様々な改良品種が作り出されている事からも伺える。日本でも多くの愛好者がいて、各地でその美しさを競うコンテストなど催されている。
英名のランブルフィッシュ(RUMBLE FISH)とは、スラングで“ケンカ”という意味。雄のその激しい闘争性からついた名前だろう。原産地タイでは、古くから闘鶏などと同じように賭けの対象として扱われ、プラガットと呼ばれる各鰭が短く、より闘争性が強く改良された品種を使って勝負が行われる。
美しい見た目を持つベタ
一般に広く販売されているのものは「トラディッショナル・ベタ」と呼ばれ、プラガットのブリーディングの経過で派生した、鰭の大きく、体色の美しいタイプを選別・固定したものである。これらが、もっとも多く流通し、私達が目にする機会の多いタイプであろう。
更にトラディッショナルベタの中から、より大きく、形の整った尾鰭などの特徴を伸ばしていった系統がショーベタ(Show Quality Betta)と呼ばれる。つまり、゛ショーに出せるほど美しいベタ゛という意味である。ちなみにプラガットとは、タイ語で「噛みつく魚」=プラ(魚)・カット(噛む)という意味。
ベタの野生種(Betta splendens) ↓ プラガット(Pla Kat) ↓ トラディッショナルベタ(Traditional Betta) ↓ ショーベタ(Show Quality Betta) |
中でもショーベタは、世界中に数多くの愛好者が存在し様々な改良がなされている。例えば、尾鰭が180°近くも広がるHalf Moons tails、まるで燃え盛る炎のような形状の尾のCrown tails。そのカラーバリエーションも豊富で、赤・青・白・黒・黄と色とりどりである。
その闘争性、見た目の美しさについて述べてきたが、ベタにはもう1つ大きな特徴が存在する。それは、ラビリンス(迷宮)器官と呼ばれる器官を、鰓(えら)に持つ事だ。そのおかげで、水中の溶存酸素の低下、水質の悪化にもかなり耐えることができ野生下では、干上がりそうな水溜りに生息している事もある程だ。よくビンに入れられて売られているが、前述の理由からビンでも飼う事ができるのであって、決して瓶で飼う魚ではない。当然、必要最低限の設備の整った状況での飼育が望ましい事は、言うまでも無いだろう。
また、その産卵も少々変わっていて、泡巣(バブルネスト)と呼ばれる産卵巣を雄が作る。そこに雌の産んだ卵を雄が集め、孵化後も暫く稚魚を守る、という形態をとる。また、機会があれば紹介するが、その産卵の様子もかなり激しく情熱的。
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