猫の受難時代
古来から猫には、何か不思議な力をある、と考えられ、信仰の対象になった時代があります。
古代エジプトでは神として崇められた猫、北欧では紀元前二世紀頃からフレイヤという女神が崇拝され、その馬車をひくのは2頭の大きな猫(ノルウェイジャンフォレストキャットの原種とされる)だった、などなど…猫は様々な形で民間信仰の中に登場します。
しかし、ヨーロッパにキリスト教が勢力を伸ばしていく過程で、それぞれの地域の古くからの言い伝えや、民間信仰・宗教を制圧する「シンボル」として、猫、特に黒猫は異教徒の習慣をキリスト教の祭りに取り込むために「生け贄」として使われました。
ローマ教皇グレゴリウス十一世は、1231年に宗教裁判所をつくり「猫を飼うもの、ならび、猫の世話をするものは悪魔を敬っている咎で猫と同様焼かれる」と定めたと云います。そして、十六世紀頃から十七世紀にかけてのヨーロッパでは、魔女の使い魔としてたくさんの猫が虐殺されました。
黒猫から想像する「魔」
一般的に、「白」から清潔、純真、善良、神聖などを、「黒」からは死、不安、不正、不吉、恐怖などをイメージすることが多いでしょう。
真っ黒の猫は明るいところで見ても、目以外の表情がわかりにくく、口を開けたときは真っ黒の中に真っ赤な口が…!特に猫が苦手な人には「怖い」「気味が悪い」といったイメージを抱かせてしまうかも知れません。
黒猫に限らず猫には確かに、人間とは違う何かの力があるかも知れません。しかし、それは、人間とは違う動物だからそのような力があっても当たり前なのだ、と考えれば不思議でもなんでもないでしょう。
犬は非常に優れた嗅覚で人間の役にたっていますが、猫も優れた嗅覚や聴覚を持っています。ただ、猫は犬のように「誰かのために働く」のに向いていない動物なので…本にゃんが動きたがらないものを要求しても仕方がないですね。
様々な黒猫にまつわる迷信や言い伝えは、「なぜそうなっているか?」が、科学的に解明されていなかった時代に、それを人間の欲や支配力を高めるための「道具=シンボル」として利用されたことも理由として考えられるでしょう。
黒猫は本当に不気味で、怖い猫?
好きな人にとっては黒猫ほど「美しい」猫はない、とうつります。
実際黒光りした精悍な姿態は野性的で、様々な瞳の色は特に黒猫だからこそ映えて見えます。
また、一般的に黒猫は非常に穏和で、甘えん坊な性質の猫が多いように思います。「不気味」というイメージとは裏腹に、ひょうきんなキャラクターの猫さんも多いです。
誤った言い伝えや、イメージ先行で黒猫を悪者にしないでくださいね
黒猫の毛の遺伝子
黒猫は、ソリッド=単色のカラー=1本の毛に濃淡がなく、全身が同じ色の毛で覆われています。
タビーのある猫はアグーティという1本の毛の中の色がメラミン色素の分布により、毛先が毛の中ほどより濃くなり、それによってタビーパターンが形成されている遺伝子を持っていますが、ソリッドはノン・アグーティというタビーパターンのない遺伝子を持っているのです。
アメリカのマサチューセッツ州にある肉食動物遺伝学研究所の所長ニール・B.トッドが1977年に「サイエンティフィック・アメリカン」に発表した猫の集団遺伝学の研究によると
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単色(主に黒猫)の分布は、イギリスと北西アフリカの一部で最も高く、フランスの中部から地中海沿岸の大部分でもかなり高い。しかし、ローマとベニスでは、非常に少ない。
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トッドは、黒猫は都市化された環境で好まれる傾向が高いと分析しています。
走る姿は精悍なクロヒョウのようです |