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「はぐれ獣医を特捜」その2(2ページ目)

ネコに選ばれた人たち5は、話題沸騰のブログ「はぐれ獣医 純情派~異論!ワン論!Objection!~」川野先生が獣医師として、これからの動物病院と動物たちの関わり方をアツク語ります。

岩田 麻美子

執筆者:岩田 麻美子

ネコガイド

飼い主さんによっては、治療に対しての考え方も違うでしょうね。

●ペットオーナーのすべてが高度医療を望む訳ではありません。その人にあったレシピ、
その人にあった治療、その人にあったぴったりの服を用意してあげる、ただそれだけです。

だから、ある程度飼い主さんがどのようにしたいか、何を望んでいるかを把握しなければならないですね。それと大切なのは飼い主さんのバックグラウンドですね。

エビデンス(根拠)に基づいた医療だけではなくて、アメリカでよく云われるナラティブ・ベイスド・メディスン「NBM(Narrative Based Medicine)」の実践を心がけています。NBMとは患者の声に耳を傾け,一つの物語として患者と病いを見ることで,より患者に寄り添ったケアを可能にすることを意味します。要するに、その人の信条だとか家庭環境であるとか、そういうバックグラウンドを踏まえた上で、その人のトータル的なケアをしていくことが大切だということですね。

飼い主さんにも色んな思いがあると思うんです。
抗ガン剤を使って治療すればQOLが向上することはわかるけど、年金生活で経済的な負担が難しいとか。
お父さんもお母さんもガンで他界していて、自分も職がなくて、でもなんとか連れてきたとか。
そういう人たちに対して、これはこうでね、ああでと理論的に説明しても心に響かないですよね。
その人のバックグラウンドを出来るだけ把握して、治療方法を提示した上で、飼い主さんに選んでもらう手法が必要だと思います。

獣医師という立場から動物病院に来る人への何かアドバイスはありませんか?
獣医師とは、こんなコミュニケーションを取って欲しいとか?

●そうですねぇ。
可愛がってくれたらそれで良いではないでしょうか。それぞれの可愛がり方があると思います。

治療に関するご自宅での協力としては…。
尿石症の治療で、食事管理を続けられず再発するケースは少なくありません。

母親の知人が、実家の近くの動物病院で『尿石症のご飯を与えていないと死ぬよ』、って脅かされたっていうんですよ。
川野さんの息子さんの話をちょっと聞かせてもらいたいんだけど、って
電話がかかってきちゃうわけですよ。
「これこれこうだから、やっぱり食べさせた方が良いですよ」、って同じことを説明しますよね。すると「まぁ、良い息子さんねぇ」って事になるわけですよ(笑)。
結局は言い方の問題と飼い主さんの受け取り方だけなんですよね。
要はコミュニケーションスキルですよね。

飼い主さんにはやはりホームドクターと信頼関係を構築するためにしっかりと話をして欲しいと思います。逆に獣医師は、もっと飼い主さんの話を聞かないといけないんですよね。先ほどの話に戻ると「あの先生に云ったら怒られるから怖い」ではなくて、そういったすべての人間関係がうまくいけばペットに対しても適切なケアができるんじゃないかと思います。

脱線しましたが、質問の回答になるかどうかわかりませんが、「治療に関してはひとつの“プロジェクト”なので、飼い主さんにも良き“サポーター”となってもらいたい」ということでどうでしょうか…。

ピイタンちゃん
ピイタンちゃん

先生が尊敬する獣医さんとは?

●わからないことはわからない、といえる獣医師でしょうか。
別に私の病院じゃなくても、その病気を治療することができるのであれば別の病院で診てもらえばいいと思います。
飼い主さんによってはまず無理だと云われても、ひょっとしたら他に良い方法があるんじゃないかって思っているかもしれませんし、その後悔の中で亡くすのはかわいそうです。
ある病院で95%以上難しい状況だと言われたとしても、他の病院で画期的な治療方法を実践している先生がいるかもしれません。
その5%にかけるのであれば、他の病院にセカンドオピニオンとして転院することは飼い主さんの自由です。

仮に私が転院される側でも何とも思いません。
日本の獣医医療のレベルが向上し、一頭でも多くの動物が健康に暮らせる環境を整備できるかということが大切ですね。

自分は人間として生まれたけれど、蛋白質も何もかも親から全部もらってきて、自分からは何も作り出していません。
ただ便や尿などの汚染物を排泄するだけの生物体なんですよね。

人間として社会人として、何かを残すことが生きている証となるのではないでしょうか。頭のいい人はビジネスを残せばいいし、センスのある人は音楽や映画や芸術を残せばいい。あるいは言葉やお笑いであったり・・・何かを残すべきだと私は思うんですね。
私もペット産業の中の小動物医療というニッチなフィールドで生きていますが獣医師として飼い主さんの心のケアと動物の肉体的・精神的ケアという一分野に関しては世の中に貢献できるのかなと思います(笑)。

情報が錯乱していることは否めませんが、インターネットが普及してブログやホームページなどのツールを利用すれば誰でも簡単に情報をアウトプット出来る時代となりました。新しい研究結果や解明された事実を次世代へバトンをつないでいく必要があると思います。

外科医の友人とよく電話するんですよ。
彼は消化器外科の専門医ですから外科医でも消化器以外は執刀しません。一方獣医師は内科や外科だけではなく歯科や薬剤師としての役割を担う必要があります。それを彼は「いろんなことして楽しそうだね。俺なんて大腸しか切らないもん。スゴイよね、獣医師って」という純粋な彼の意見が皮肉に聞こえます(笑)。
ジェネラリストとしての資質が要求されるので仕方ないのですが、獣医療も専門分野に特化していく必要があると思います。
基本的に人間にも動物にも本来病気を治そうとする力が備わっているわけですよね。それを少しサポートしてあげているだけだと思うんです。
だから治してる、っていうのはおこがましいですね。
でも外科は少し違いますね。
何もない土地にビルが建つぐらい劇的な変化がありますからね(笑)
アメリカの医療関係者が「神の手を持つ男」と賞賛する脳神経外科医の福島先生をご存知ですか?
あるテレビ番組で「福島先生が最も気にされていることは?」という質問に対して「若い脳神経外科医のレベルアップ」と答えていました。
学閥の壁を越えて、自分が海外で学んだ技術を伝授したい、と。
リスペクトすべき考え方だと思います。

私も獣医師として少しでもそんな存在に近づけたらと思います。
例え独りでも先生に教わって立派になりました、と自分の葬式に弟子が来てくれて、外にはワンコやニャンコが、ニャンニャンワンワン・・・。
理想の最期ですね(笑)

ピイタンちゃん
ピイタンちゃん、先生をじっと見つめます

所属について教えて下さい。

●株式会社JPRです。
この会社は同じ年齢の獣医師3名が集まり設立した株式会社です。
ドラマ「スクールウォーズ」のように熱い魂をもった体育会系知的集団で、ユーザビリティの高いサービスを提供したいというバックボーンに基づいて、プレーヤーである獣医師と統括する監督によるシステマティックな組織を構築し、正のスパイラルを生み出すべく日々努力しております。
1+1=2ではなく、無限大に可能性を広げるためには、ランチェスターの法則ではありませんが、やはり数は必要です。
あるテレビCMのように経営者がいくらダンクシュートがうまくてもしかたないんですね(笑)

もしも…お別れの時は…→

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