腎臓の状態を知るための検査
正しい検査結果を知るために、検査前は12時間の絶食が必要です。
柴内副院長による採血 赤坂動物病院にて |
1.血液検査
腎臓の働きを知るためには、通常動物病院では血液検査を行います。
血液検査のBUN(尿素窒素)とCre(クレアチニン)という項目の価で腎臓の働きを見ることが一般的ですが、血液検査の数値に異常が現れた状態では、すでにかなり腎不全が進行しています。
※実験的研究では、腎臓が75%障害でも血液検査の値が上がらない、とあります。
<BUN(尿素窒素)検査>
タンパク質(食物など)の老廃物で、腎臓の排泄機能が悪くなると尿素窒素が尿中にうまく排泄されなくなり血液中の濃度が上がります。
増加:急性/慢性腎炎、腎不全、脱水、尿路閉塞(尿路結石)、糖尿病、感染症など
低下:タンパク質欠乏、肝不全など
<Cre(クレアチニン)検査>
筋肉が活動したときにできる物質で、尿素窒素(BUN)と同じく、腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄される一種の老廃物です。もし障害があるとうまく排泄されず血液中の濃度が上昇します。クレアチニンは尿素窒素とは異なり、腎機能の障害以外ではほとんど影響を受けないので、正確に腎機能障害の程度を知ることができます。
増加:腎機能障害、筋障害など
血液検査においては、BUNとCre値の比を知ることも重要です。
BUN値÷Cre値=10-20であれば正常で、BUNの価は評価されます。
BUN値÷Cre値=20以上の場合は、脱水などがないか?BUNが高くないか?Creが低くないか、など注意すべき病態を注目する必要があります。
→血液検査に関する参考リンク
ネコの不妊手術-1 ネコの不妊手術の術前検査
動物病院で行われる検査-その1-血液検査
2.尿検査
柴内副院長による膀胱穿刺 赤坂動物病院にて |
このように血液検査値で異常が発見されるときには、腎機能がかなり落ちている状態だといえますので、実際の現在の腎臓の状態を知るためには、尿検査を行い、色や比重・蛋白を調べる方が有効です。
自宅で採尿した尿で検査していただくことも可能ですが、その場合尿を取るお皿などが無菌状態であること、採尿して30分以内の尿であること(それ以上時間がかかる場合は冷蔵保存が必要)など、検査に適した尿を取ることが難しいと思われます。
経験豊かな獣医師であれば、膀胱穿刺(膀胱の中から注射器で3ml程度の尿を吸い出す)を行ってくれますので、少しオシッコが溜まっている時に病院に連れて行くのが望ましいでしょう。
尿比重の解釈としては、「正常」という判断ではなくその猫の体の水和状態に対して尿比重が「適切」であるかどうかを判断基準にする必要があります。
猫の場合、濃縮能が1.035以上あれば問題はありません。ちゃんと尿を濃縮して水分を体に戻しているので、腎臓はきちんと働いている状態であるといえます。
脱水が起きている=水分が余分に捨てられている=は、体が水分を必要としているのに、尿からどんどん水分が捨てられていく=腎臓がちゃんと働いていない事を意味します。余分に捨てられている尿は濃縮されていないため、ほとんど色が付いていないような薄い色です。
いつも薄いしゃぶしゃぶの尿を排出しても、1回だけの尿検査の値を鵜呑みにせず、最低でも3回は調べられるべきでしょう。
もし、3回続けて濃縮能が1.013-1.034の場合は腎臓が弱っている初期の状態と思われます。
大抵の場合、この時点ではBUNやCre値に異常は見られません。
濃縮能が1.008-1.012になると、腎臓は全く仕事をしていない=濃縮も希釈もしていない状態で、すでに腎不全です。
糸球体で濾過された液体をそのまま出している、糸球体濾液と同等で尿細管は水を再吸収するという仕事をしていない状態です。
もし、1.007以下の濃縮能であれば、腎臓は希釈という仕事をしているので腎不全ではありません。糸球体濾液1.008-1.012の間より水が増えているので、尿細管は水を出して薄める仕事を行っています。
しかし、何回検査しても1.007以下というのも問題です。このままだと身体の中の水がどんどんなくなってしまう事を意味するからです。
この場合は、頭の中で何か起きているのか?ホルモンがおかしいか?など頭の病気が疑われます。
尿の濃縮能
1.008-1.012→濃縮も希釈もない状態
1.008-1.012→腎臓が弱っている初期の状態
1.035以上→充分な濃縮
1.007以下→希釈がある(でもどっか変かも?)
その他の尿所見としては、腎疾患の存在を示唆するものとして、尿比重が1.035以下で蛋白尿が常に出ている場合は要注意です。
また、蛋白をCreで割って、その値が猫では0.6-1.0以下であれば正常です。
1.0を超える場合は異常値なので、腎疾患が疑われます。