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猫と赤ちゃんが家の中で一緒に生活するには?3つ解決したい疑問

妊娠・出産、子育てにおいて、猫の同居は、アレルギーや病気の感染等「よくない」と言う人がいます。妊娠したら猫を手放さなければいけないでしょうか。もし妊娠したら次の3つについて、正しい知識を持ってください。正しい知識を身につけることで、赤ちゃんも猫も守ることができます。

岩田 麻美子

執筆者:岩田 麻美子

ネコガイド

赤ちゃんと猫の同居は危険?

猫と赤ちゃんが家の中で一緒に生活するには

猫が教えてくれること

いまだに、妊娠・出産、子育てにおいて、猫の同居は「よくない」と言う人がいます。妊娠したら猫を手放さなければいけないでしょうか。猫は、妊婦さんや赤ちゃんに悪影響を与える存在なのでしょうか?

猫と同居中のあなた。もし妊娠したら次の3つについて、正しい知識を持ってください。正しい知識を身につけることで、あなたは赤ちゃんも猫も守ることができます。

猫がいてくれるからこその穏やかな生活が、ずっと楽しめますように!
 
<目次>
 

疑問その1.トキソプラズマ症って?

もし、「猫がいると、健康な赤ちゃんが生まれないわよ」といわれたら。

トキソプラズマという言葉を、一度は耳にしたことがある人も多いでしょう。トキソプラズマ感染症は「人畜共通感染症=ズーノシス」のひとつで、トキソプラズマは寄生虫の中でも、もっとも小さい「原虫=胞子虫類」です。トキソプラズマ原虫は、多くのほ乳類、人間、猫、羊、豚、齧歯類(ネズミやハムスターなど)、鳥類も感染しやすいですが、犬は感染しにくいようです(爬虫類や両生類、魚類も感染しやすいとしている資料もあります)。

現在、成人の約20~60%はすでにトキソプラズマに感染したことがあるといわれており、健康な人であれば、健康上の驚異にはなりません。

しかし、未感染の女性が妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すると、胎盤を通じて胎児も感染(先天性感染)し、胎児の流・死産や、新生児水頭症を引き起こす可能性があります。

もし、トキソプラズマ症に関して不安があれば、まずトキソプラズマの抗体検査を受けてください。胎児に問題となる感染は、妊娠中に初めてトキソプラズマ感染症にかかった場合だけです。過去(妊娠の6ヶ月以上前)にトキソプラズマ感染症にかかっていれば、なんの問題もありません。これは免疫機構で増殖が抑えられ、血中に虫体が出てこない、すなわちトキソプラズマに対する抗体ができているからです。

■トキソプラズマ症にはどうしたら感染するのか?

トキソプラズマ原虫の終宿主になるのは猫科の動物だけなので、トキソプラズマというと真っ先に猫が悪者にされます。しかし、トキソプラズマは猫からより、生の肉類(特に豚肉)や土、ハエやゴキブリなどからの方が、感染する機会が多いです。

トキソプラズマ原虫のオーシスト(虫の卵のようなもの)や、シスト(シェルターのような核の中で活動を停止しているサナギのようなもの)がいる動物の肉を食べると、その袋が破れてトキソプラズマに感染します。しかし、オーシストやシストは熱に弱いので、肉類を食べるときはよく加熱すれば問題になりません。土いじりする時は必ずゴム手袋を着け、その後石けんできれいに手を洗えば感染を防ぐことができます。

■猫からトキソプラズマに感染するのは?

猫からトキソプラズマ症に感染するためには、以下の条件がそろっていなければなりません。

1.トキソプラズマに初感染、または免疫が落ちて再感染・再発症している猫が約1~数週間の間に排出し
2.24時間以上放置された糞便についているオーシストを
3.直接口に入れた場合です。

猫が排泄したウンチを24時間以内に片付ければ、猫から直接感染することはありません。

さらに、猫からのトキソプラズマ症を予防するために、排泄された猫のウンチは早めにビニール手袋を着用し片付け、その後石けんで手をきれいに洗えば安心できるでしょう。

トキソプラズマ症にかかわらず、どんなときでも手をキレイに洗う習慣を付けてください。また、妊娠したり免疫が落ちている時は、猫との濃厚な接触(一緒に寝る、食べ物の口移し、顔を舐めさせるなど)を避けましょう。
猫も兄弟

猫も兄弟

 

疑問その2.猫がいると赤ちゃんはアレルギーになる!?

「赤ちゃんがアレルギーになるから、猫なんか飼ってちゃダメじゃない」

動物と同居していると、アレルギーになりやすいという人がいますが、近年の研究では幼いころから動物が身近にいる子供の方がアレルギーを起こしにくいとされています。

猫アレルギーの人は、猫の「フケ」や「唾液」にアレルギー反応を起こすので、毛がないスフィンクスのような猫でもアレルギー反応は起こります。また、最初はひどいアレルギー症状が出ても、同居生活を続けているうちに徐々にアレルギー症状が軽減し、「ほかの猫はダメでもうちの子はOK」になる人もいます。

アレルゲンは猫だけではありません。一般的に一番多いとされているアレルゲンは、ハウスダストです。ほこりの出にくい寝具に変える、カーペットをやめる、こまめに掃除を行う、空気清浄機を備え付けるなどして、猫以外のアレルゲンを少なくすることで、ひどい症状が押さえられるかもしれません。

アレルギーを起こすかもしれないものすべてを排除することは不可能です。それよりも、少々のアレルゲンには対抗できる免疫=抵抗力を養って、アレルギーをコントロールできれば理想ですね。
 

疑問その3.赤ちゃんにとって猫は危ない!?

猫と暮らしたことのない人は、「猫が赤ちゃんに焼き餅を焼いて、ケガをさせるかもしれないわ!」と心配(大きなお世話)されるかも……。

実際のところ、猫が赤ちゃんに対してどんな反応を示すかはわかりません。猫はもともと「突発的な現象」を嫌う動物です。家族が増えることを事前に認識させておくと、猫も赤ちゃんを受け入れやすくなるかもしれません。

猫はニオイで「もの」を認識します。赤ちゃんや母乳には特有のニオイがありますので、以下のようなやり方でそのニオイに慣らせてはいかがでしょうか。

赤ちゃんに見立てた人形を用意します。検診などで産院に行くときにタオルを持参し、病院スタッフさんに事情を話し、タオルに赤ちゃんやミルクなどのニオイを付けてもらいます。赤ちゃんのために用意したベビーベッドや寝具の中に、ニオイのついたタオルでくるんだ赤ちゃん人形を寝かせて、猫が興味を示せば自由にニオイをかげるようにしておきます。産院に行く度に清潔なタオルを持参し、新しいニオイをつけておきましょう。

また、大人の声と赤ちゃんの泣き声は周波数が違いますので、赤ちゃんの泣き声を録音した音を猫に聞かせておくのもよいでしょう。
猫と赤ちゃんの共生生活

猫と赤ちゃんの共生生活
 

赤ちゃんのいる家で猫と共に暮らすこと

猫を撫でるだけで心拍数や血圧が安定することはよく知られています。妊娠中、つわりがひどくて苦しいとき、寄り添ってくれる猫は安らぎになるかもしれません。赤ちゃんの夜泣きがひどくフラフラになったとき、猫がいることで癒されるかもしれません。

やがて猫と共に成長していく中で、子供は「優しさ」や「いたわり」など、言葉では教えることが難しい感覚を身につけることができるでしょう。幼い子供のうちに、人間とは違う別の「いのち」の存在を肌で感じさせてあげてください。

悲しいことですが、猫の時間は人間より短いです。しかし、「いのち」には終わりがあること、それまでの間を一生懸命「いきる」ことを、その身をもって示してくれる猫の存在は何物にも代えがたい教育となるでしょう。小さなもの、弱いものに対する優しさや、面倒をみなければいけない存在がいることで、責任感が生まれるでしょう。

妊娠・出産後に猫がいることをマイナスで考えないでください。猫がいても、衛生面や安全に気を遣った常識的な生活をおくっていれば問題となることは少ないのですから。
 

これから妊娠するかも知れない猫の同居人さんへ

妊娠がわかる前から、猫を清潔に保つことを生活習慣にしておきましょう。猫は完全室内飼いにして、寝床やトイレはいつも清潔に保ち、こまめにクシを使ってむだ毛を取り除き、爪を切るなどグルーミングの習慣をつけておきましょう。常日頃から猫の健康状態をよく観察して、ワクチンや検便などを定期的に行いましょう。

ただし、どんなに猫を愛していても、猫は猫と自覚を持って接し、猫とキスをしたり、ハシで食べ物を与えるなどの過度の愛情交換は避けましょう。猫に関することで何をするときも最初に手を洗い、終わってたらまた手を洗いましょう。

いま現在、猫とあなたが依存関係になってしまっているという自覚があれば、猫と距離を保つ時間を作りましょう。
この温もりが愛おしい

この温もりが愛おしい

 

もし、猫がいることを重荷に感じたら

妊娠中に体調が悪くなって猫の面倒をみられなくなったり、精神的に不安定になって猫との生活が重荷に感じるようになったら、一時的に猫を預かってもらうか、別に責任を持って飼ってもらえる人を探してください。猫の存在を重荷に感じる飼い主との生活は、猫にとっても大きなストレスでしょう。

妊娠したからという理由だけでは、猫を手放さないでください。まずは、できる限りのことをやってみて、それでも猫を飼い続けられないと判断したときは、必ず猫を次に託せる人を探してください。

それぞれの人に、その人の数だけ立場や環境の違いがあるでしょう。簡単にクリアできる問題ではないかもしれませんが、猫を愛する気持ちと、周りの人たちに理解してもらいたいという強い意志があれば、あなたは赤ちゃんと猫との関係を維持することができるでしょう。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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