国公立大と私立大、入学先は学費や就職率からも考えよう
大学受験も後半戦に入った。この時期になると、国立大志望だったが私立大専願に変更する受験生も出てくる。様々な迷いも出てくる頃だろう。そこで3つの点から、私立大がいいか、それとも国立大がいいのかを考えてみよう。<目次>
国公立と私立、学費は当然国公立大が有利
費用の点からすると、国公立大が有利だ。以前ほどの費用差はなくなったとは言え、文系の場合、国公立大で年額で約53万円、一方私立大で約80~100万円。私立理系や医学部、歯学部で比較すると、国公立大の優位は明白になる。国公立大では、文系と理系の学費の区別がないからだ。他の私立医大に比べると安い方だが、慶應義塾大の医学部を例に取ると、年間の学費は約300万円、薬学部では約132万円。入学金や下宿の費用も含めれば、私立大医学部や歯学部に行くと、親の負担は相当なものになる。私立医科大の中には、加えてかなりの寄付金が必要な大学もあるので、費用の格差はもっと拡大する。たとえ一年や二年浪人したとしても、親としてはできれば国公立の医学部に行って欲しいのは当然だ。
国公立大と私立大の比較しづらい学習環境の違い
大学の学習環境を数値化して比較することは実はなかなか困難。そこで、学生一人あたりの敷地面積と教員一人あたりの学生数の点で考えてみよう。敷地面積が広ければ、よりゆったりとした学習環境にある。また教員に対して学生数が少なければ優れた環境といえるだろう。北海道大を取り上げてみると、大学院生も含めた学生数約18,000名、教員2,000名、敷地面積660平方キロメートルで実に東京23区(621平方キロメートル)より大きい。一人あたり約36,666平方メートルという広大さ。東京ドームの大きさ(46,755 平方メートル)より少し小さい程度は驚愕するばかりだ。教員一人あたりの学生数では、たった9人となっている。
慶應義塾大で、総学生数37,890名(2008年の通学と通信教育の学部生の総数)÷1,507名(専任教職員数)≒25人。平成16年度の事業報告によれば、学校の敷地面積が642,569.37平方メートルで、一人あたり約17平方メートル。
この点で国公立大は優れている。しかし、大学の大きさだけが大学の良さを決めるわけではないだろう。
就職率がすべてじゃない?数字からみる国公立大と私立大
ほとんどの受験生は、志望校を選ぶときに就職率を意識する。大学を選択するときの大きな指標の一つとなっている。大学HPを見ると、最近のどの大学の就職率も90%を越えている。しかしこの中には、卒業してから大学院に進学したり留学するわけでもなく、何もしないでいる学生、つまり大学が示す統計に表れない学生は含まれていない。その年度の全体の卒業生を分母として、そのうちどれくらいが就職したか、また一部上場企業にどれほど就職したかで見る必要があるだろう。早稲田大のように学生数が学部生だけで全体で4万数千人と多い大学は、一部上場企業への就職者の数も膨大なものに見える。また各大学が憂慮しているのが大学を卒業はしたが、これと言って何もしていない高学歴ニートの存在である。大学の発表している数値だけで、わかる限り相対的な指数に置き換えて3つの大学を比較してみよう。
・早稲田大
2007年度で12,026名の卒業生のうち、8,056人が就職で約67%の就職率。2,083名が進学や留学。その他が1,718名(約14%)にも及ぶ。
・慶應義塾大
同じく2007年度で卒業総数7,636名、就職者数5,186名で約68%。その他819名(約11%)となっている。
・東大
2005年度の学部卒業生総数3,298名、就職1,069名で32%、進学1,776名、その他71名(約2%)となっている。
東大のようにすぐ就職せず、進学する割合が高い大学もある。就職率だけで見ると以前取り上げた豊田工大のように100%という大学もある。早稲田大では約14%もの人がどうなっているかわからない。しかし、早稲田大の伝統として一部の中退者にこそ、各界で活躍する人物も多い。このように価値が多様化している時代にこそ、自分なりの価値の尺度を持つべきなのではないだろうか。
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