遺族は腫物……と思っていませんか?
孤独感、罪悪感、怒り、抑うつなどと戦いながら悲しみを乗り越えた人でも、記念日や行事など特別なときにはまだ辛く悲しい思いをするかもしれません。しかしそれまで感じていた強い無力感や絶望感は少しずつ薄れていきます。 |
しかし「避けられている」という感が、その間に遺族の中に湧き上がってしまうこともあります。そうすると孤立したような気分になり、ますます悪循環に陥ってしまうとか。
特に葬儀後数か月が経過すると、他人からの助けが少なくなってきますので、内にこもりやすくなってきます。そんなとき「いつでも話を聞いてあげるよ。」というオーラを発している友人・知人が近くにいれば、遺族にとってこれほど心強いことはありません。
話を聞く際には、最低限次のような点に気をつけておきましょう。
- 話をさえぎらない
死別内容が深刻な場合など、聞くのがつらい話だったとしても、話をさえぎったり話題を変えたりしないほうが良いでしょう。遺族は自分の気持ちを受け入れてもらえないことに落胆し、以降は心を閉ざしてしまう可能性があります。 - 感情をそのまま受け入れる
特に怒りや罪悪感など、負の感情はなかなか表に出せずに苦しんでいるケースがあります。そのような気持ちを打ち明けられても批判せずに聞くことが大切です。 - 自分の体験を強要しない
自分の体験を話すことは時に遺族の支えになりますが、自分の体験を押しつけたりアドバイスを強制するのはやめましょう。死別の体験はそれぞれ別のものであって、悲しみのプロセスや回復過程も人によって違います。
遺族へのNGワード
勇気づけや励ましのつもりでも、遺族にとってみれば針で突っつかれたようにグサッときてしまう言葉もあります。次のような言葉は避けたほうがいいでしょう。●避けたほうがいい言葉かけの例
- 強くなって、前向きに生きましょう!
- どんなに泣いても、愛する人は戻ってきませんよ。
- あなたの苦しみや悲しみは、とても理解できます。
- 辛いことは時間が解決してくれます。
- 早く元気にならなければ!
- ○○さんは人生を全うしました。
おすすめと言われている言葉かけの例もご紹介します。
●おすすめ言葉かけの例
- 悲しんでいいのですよ。
- 怒っていいのですよ。
- 今までと同じように仕事や家事ができなくてあたりまえです。
- 無理に頑張る必要はありません。
- 何かをする気力がなくて当然です。
- 本当に辛いことは、一生忘れられなくて当然です。
死別の悲しみのプロセスは数段階あるといわれています。これらの段階は、専門家によって分類の仕方・内容が違い、またはっきりと境界線があるわけでもありません。悲しみを乗り越えるプロセスは前の段階と次の段階の症状が重なりあって現れることもあれば、ひとつの段階にしばらくとどまっていることもよくあります。
人それぞれ悲しみの乗り越え方はさまざまですが、死を受け入れ故人を本当に旅立たせてあげることができるようになるまで心の葛藤は続きます。
【参考文献】
「死とどう向き合うか」 著者:アルフォンス・デーケン(NHKライブラリー)
「死別の悲しみを癒すアドバイスブック」 著者:キャサリン・M・サンダーズ 訳:白根美穂子(筑摩書房)
「『悲しみ』の後遺症をケアする」 著者:小西聖子、白井明美(角川学芸出版)
「葬儀概論」 著者:碑文谷創(表現文化社)
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