芸術の町ミュンヘンには、3つの大規模な美術館群「ピナコテーク」があります。14~18世紀のヨーロッパ絵画を展示した「アルテ・ピナコテーク」、19世紀以降の絵画が見られる「ノイエ・ピナコテーク」、そして様々な現代アートが集まった「ピナコテーク・デア・モデルネ」。その中から今回は、19世紀前半に建設された「アルテ・ピナコテーク」をご案内。700以上の名画がずらりと並ぶ見ごたえのある美術館。併設のカフェも素敵でオススメです。

ヴィッテルスバッハ家の膨大な絵画コレクション

アルテ・ピナコテーク
アルトドルファー『イッソスの戦い(アレクサンドロス大王の戦い)』(1529年)
「アルテ・ピナコテーク Alte Pinakothek」に展示されているのは、14~18世紀のヨーロッパ絵画。これらは16世紀前半からヴィッテルスバッハ家(バイエルンやプファルツ地方に君臨していた王家)により、数百年にわたって収集されたものです。

そのコレクションの始まりは、1528年ごろバイエルン公ヴィルヘルム4世(在位1508-1550年)が、ミュンヘンの王宮内に飾るため制作を依頼した歴史画の作品群でした。そのうちの一つ、ドイツの画家アルトドルファーの描いた『イッソスの戦い(アレクサンドロス大王の戦い)』は有名で、現在アルテ・ピナコテークに所蔵されています。

アルテ・ピナコテーク
ルーベンス『ルーベンスとイザベラ・ブラント』(1609/10年) 画家自身と最初の妻イザベラを描いた作品
バイエルン選帝侯マクシミリアン1世(在位1597-1651年)は、ドイツ絵画を熱心に収集し、中でも特にデューラーの作品を好みました。選帝侯マクシミリアン2世エマヌエル(在位1679-1726年)は主にフランドル絵画の収集家で、そのコレクションの数は1,000以上に上ったと言います。

プファルツ選帝侯ヨハン・ヴィルヘルム(在位1690-1716年)もオランダ・イタリア絵画の他、やはりフランドル絵画を精力的に収集。ルーベンスのものだけで46作品も所有していました。アルテ・ピナコテークにはそれらを展示する「ルーベンスの部屋」があり、この美術館の大きな見どころとなっています。

バイエルン王ルートヴィッヒ1世がピナコテークを創設

アルテ・ピナコテーク
アルテ・ピナコテーク。第2次世界大戦で大部分が破壊され、戦後修復された
ヴィッテルスバッハ家の絵画収集の他、1803年には教会財産の国有化により、新たに約1,500の作品がバイエルン州の所有となります。主にイタリア・ドイツ絵画を集めていたバイエルン王ルートヴィッヒ1世(在位1825-1848年、ノイシュヴァンシュタイン城で有名なルートヴィッヒ2世の祖父)は、これらの膨大なコレクションを所蔵する美術館の建設を計画。1826~1836年にかけて、建築家レオ・フォン・クレンツェ(Leo von Klenze)により、アルテ・ピナコテークが建てられました。

このアルテ・ピナコテークに所蔵された絵画は、ヴィッテルスバッハ家の好みで収集されてきたもの。そのため内容に偏りがあり、14~17世紀の作品が大半を占めていました。ルートヴィッヒ1世の時代には、18世紀の絵画はあまり人気がなかったのです。現在展示されている18世紀の作品は、多くが20世紀後半になってから銀行の後援などにより補われたもの。こうしてアルテ・ピナコテークは、ヴィッテルスバッハ時代よりさらに内容豊かな美術館となりました。

次のページでは、国別に展示された主な作品を写真入りでご紹介します。鑑賞に疲れたらぜひ行っていただきたいカフェの情報も!