環境に優しい瓶ビールが90%を占めるドイツ
飲料店ではこのように瓶入りのビールや水、ジュースがケースに入って売られている |
ビール瓶には8セント(約12円)のデポジット(預かり金)が課され、お店で瓶を返却するとお金も返ってくる仕組み。1本当たりの金額はごくわずかですが、ドイツでのビールの消費量は相当なもの。あっという間に何十本もたまり、返却しに行く価値があります。またこの制度はしっかり定着していて、ビール瓶を返却するのは当然のこと、ビール瓶は捨てるものではない、という感覚がドイツ人の間に根付いているのも事実です。
瓶は重く、持ち帰るのには缶の方が断然楽なのですが、ドイツでは缶ビールは普及していません。ビールにこだわるドイツ人にとって缶のビールなんて邪道なのです。味を比べたら、瓶ビールの方が格段に美味しい! 瓶ビールを飲み慣れていて久しぶりに缶で飲んでみると、アルミの妙な味がすることに気づきます。瓶で飲んでこそ、ビールのピュアな味が楽しめる。この点は、ドイツ人のこだわりでもあります。「便利・手軽さ」が1番重要なわけではないのです。
2003年から使い捨て容器にもデポジット制を導入
リターナブル(再利用)ボトル返却機。ボトルを入れると本数とデポジット金額が自動計算され、出てきたレシートを持ってレジに行き返金してもらう |
※ビール以外のリターナブル容器のデポジットは15セント(約22円)。
この背景には、使い捨て容器のデポジット課金を高くしてその普及に歯止めをかけ、リターナブル容器の使用をもっと増やそう、という狙いがあります。ドイツにも残念ながら使い捨て容器の波が押し寄せていて、ここ十数年のあいだ、缶ビールや使い捨てペットボトルのミネラルウォーターの割合が増加の一途をたどってきました。
しかし2003年の使い捨て容器に対するデポジット制の導入で、全体的にリターナブル容器の割合が再び増加。デポジット制の効果が表れています。デポジットは容器を返却すれば戻ってくるのですが、一時的にでも払わなければいけない金額が高いとなると、「デポジットが安い商品を買おう」という心理がはたらくようです。
リターナブル(再利用)容器の割合が年々減少傾向にあったが、2003年の使い捨て容器に対するデポジット制導入で、再び増加。デポジット対象外のジュース、ワインには変化が見られない (出典:Gesellschaft für Verpackungsmarktforschung mbH) |
ただ、ドイツ環境省ではまだ2004年以降の統計の詳細が公表されていませんが、ドイツの自然保護団体「NABU(Naturschutzbund)」によると、2005年のミネラルウォーターのリターナブル容器使用は56%にまで再び減少。ビールでは88.5%と、2003年とほぼ変わらない数字となっていますが、飲料ボトル全体で、使い捨てにどこまで歯止めをかけられるかが、ドイツの今後の課題となっています。
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