社会問題化する「年金難民」

屋台
屋台で腹いっぱい食べてもわずか500円という暮らし
「年金の範囲内で暮らしたい」、「楽園での暮らしを楽しみたい」と、一時は移住を決意したものの、「思った以上に環境が劣悪だった」、「現地になじむことができなかった」などという理由から、やむなく引き揚げ帰国をする日本人高齢者も、徐々にですが増え始めています。

つい先般も、マレーシアで、日本から移住した独居老人が、滞在先の宿泊施設で認知症を発症するという事例がありました。生活習慣が異なり言葉も通じない異国の地に、高齢になってから移り住むことには、さまざまなリスクがあります。

低物価による優雅な暮らしをあおるテレビ番組の放映直後、マレーシア観光局には、「(現在)生活保護を受けているが、マレーシアでは、本当に毎月6万円で暮らすことができるのですか。」といった相談も寄せられたといい、職員も驚きを隠せないでいます。
近ごろの日本では、格差社会が問題になっていますが、生活保護を受けているひとや、過去の年金未払いにより、現在、十分な受給がなされない一部の日本人が、低物価な他国での生活を目指すという現象が続けば、大きな社会問題となるまでに、そう時間もかからないでしょう。
こうした、「年金難民」を増やさないためにも、わたしたちは国際人としての自覚を、より一層強く持つことが重要なのではないのでしょうか。

大切なのは「住まわせてもらっている」という心

とりわけ、アジア諸国に滞在する日本人のなかには、ごく一部ではありますが、心ない行いをするひともいます。

例えば、クアラルンプールで露天商を営む地元住人に対して、横柄な態度で品物をディスカウントするよう強要した、ある日本人男性は、半日居座った挙句に、ひとつも買わずに帰ってしまったといいます。現地のひとの暮らしを支える「商売」の邪魔をしていることに、なぜ気づくことができないのか。値切るのが当たり前という土地柄であっても、限度があるだろう。こうした声が聞こえました。

今年2月に、リタイアメント・ビザ制度をあらたに導入したばかりの台湾では、環境になじめなかった日本人夫婦が、早々に引き揚げを決意。ところが、「空気が悪い」「健康を害するために来たようなものだ」といった内容の引き挙げ理由を、地元メディア各社に、文書をもって露骨に伝えたことから、台湾の国民感情が悪化。公の場での非難発言だっただけに、当局関係者は深く傷ついたといいます。
こうしたコメントを受け、地元有力紙のなかには、「なぜ、(美観都市の)シンガポールのように(台湾は)なれないのか」といった自省気味の論調もありました。とはいえ、それ以前に「国際人」として、発言する場を熟慮する、思いやる必要があったのではなかったかと残念でなりません。

こうした摩擦によって、「(日本人に対して以前から)よいイメージを抱いていましたが、すっかり覆されました」という言葉すら、相手国から聞こえてくるようになりました。

「郷に入りては、郷に従え」のことわざ通り、相手国を敬い、順応する努力をすること、「住まわせてもらっている」という謙虚な心をもつことが、リタイアリーが海外で暮らすうえで重要だといわれています。

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