次世代DVDのプロテクトは破られたのか?
Blu-rayDiscやHD DVDなどの次世代DVDビデオは高解像度なHD映像だけでなく、DVDビデオよりも高度なコンテンツ保護機能を持っています。DVDビデオのコンテンツ保護機能であるCSSがコンテンツ自体を保護する暗号化であるのに対して、次世代DVDのコンテンツ保護機能であるAACSはコンテンツの暗号化に加えて、ディスプレイへの出力に関しても暗号化し、幅広く保護するようになっています。
昨年、次世代DVDビデオが登場して以来、そのプロテクトを破ったというような話や、次世代DVDプレイヤーソフトのデバイスキーが流出したというような話を聞きます。これで次世代DVDのプロテクトは破られてしまったのでしょうか?ここではDVDビデオおよび次世代DVDビデオのコンテンツ保護機能について紹介し、これらの事件によって、本当に次世代DVDのプロテクトが破られたのか?を紹介します。
■Contents
1. DVDビデオのコンテンツ保護機能CSSとは
2. CSSの弱点
3 AACSの仕組み
4. 次世代DVDビデオのハッキング事件
5. CSSとAACSの違い
DVDビデオのコンテンツ保護機能CSSとは
■どうやって暗号化する
DVDビデオのコンテンツ保護機能は「CSS(Content Scrambling System )」と呼ばれ、ビデオコンテンツを暗号化して保護するというものです。この暗号化にはディスク鍵、タイトル鍵、マスター鍵という3種類のそれぞれ40ビットの暗号鍵を使っています。このなかで、ディスク鍵、タイトル鍵はビデオコンテンツの著作権者が、マスター鍵は暗号ライセンス者が提供します。これらからディスク製造業者がコンテンツの暗号化を行い、ディスクを作ります。ディスクには暗号化コンテンツに加え、暗号化ディスク鍵、暗号化タイトル鍵の2つの暗号キーが含まれます。
DVDビデオの暗号システムCSSでの暗号化処理 |
このなかでディスク鍵はマスター鍵によって暗号化されています。そのため、DVDビデオディスクには複数の暗号化ディスク鍵が収録されています。なぜなら、マスター鍵はDVDビデオプレイヤーの持つ暗号鍵であり、おのおののビデオプレイヤーは1つだけのキーを持っているからです。マスター鍵はプレイヤーのメーカーごとに異なるため、ディスク側は複数のマスター鍵情報を持つ必要があるわけです。DVDビデオプレイヤーの製造者は、CSSのライセンス者から、マスター鍵を受け取り、プレイヤーに仕込みます。
■もとに戻す仕組み
暗号化されたDVDビデオをDVDビデオプレイヤーが正常なデータに変換して再生するわけですが、ここでも変換にマスター鍵、ディスク鍵、タイトル鍵の3つの鍵が使われます。ここで使われるマスター鍵は、DVDプレイヤーに隠されている鍵です。そして、最初にマスター鍵で暗号化ディスク鍵を変換した後は、そのデータで暗号化タイトル鍵を変換し、タイトル鍵を作成して、暗号化ビデオコンテンツをデコードします。複雑な工程に見えますが、実はマスター鍵があると、どんなタイトルでも変換できてしまうのがわかります。
DVDビデオの暗号システムCSSでの復号処理 |
CSSの弱点
マスター鍵はDVDビデオプレイヤーに隠されているものですが、CSSはこれが外部にリークしないということをすべての前提にしているわけです。初期のPC用DVDビデオプレイヤーのなかに、うかつにもマスター鍵および暗号のデコードプログラムの部分を暗号化していなかったものがありました。そのため、暗号アルゴリズムが解析され、マスター鍵を生成できるプログラムが公開されてしまったのです。
CSSでは暗号のライセンス者が提供する暗号キーがマスター鍵だけであり、それが解かれれば、どんなディスクでも再生できるという点が弱点でした。そして、それをリカバリーする手段が用意されていなかったのです。かくして、DVDビデオの暗号を解くフリーウェアが登場しても、そのコピーを止めることはできませんでした。
次ページでは次世代DVDのコンテンツ保護について紹介します。