人が亡くなると「遺産相続」という亡くなった人の財産の承継に関する手続が始まることはみなさんご存知だと思います。しかし、この遺産相続は、さまざまな問題をはらんでいることも多いのです。
まず、「遺言」の有無について相続人の間でもめごとになることがあります。さらに、遺言がある場合でもその内容について争いが発生する場合もあるのです。
また、そもそも誰が「相続人」であるか分かりにくい場合がありますし、亡くなった人の財産が他人の財産と混ざっていたり、違う名前で保管されていたりすると、どこまでが相続の対象となる「遺産」となるのかの区別も難しい場合もあります。このように遺産の範囲が明確でない場合などには、相続税との関係でも問題が発生することもあります。
さて、今回は、遺産と相続人がはっきりしていた場合の遺産相続を見てみましょう。
遺産と相続人がはっきりしている場合の問題
それぞれの立場で、それぞれの言い分があります。 |
■相続人の中で特別に生前贈与を受けた人
…生前に亡くなった人から特別の利益を受けている人を「特別受益者」と言います。
■故人の看病や世話をした人
…「寄与人」(きよにん)と言います。
上記のような人がいた場合、互いの調整が難しくなることが多くあります。他の相続人に比べて特別に利益を得ている人については、その利益分を差し引いて遺産分割することになります。また、亡くなった人の看病や世話をした人については、その貢献度を上乗せして遺産分割することになります。ところが、特別の利益や特別の貢献が証明しにくかったり、他の相続人が争ったりすることも多く、調整が難しくなるのです。
遺産をめぐる紛争の解決方法
調停は当事者同士の調整と話合いに時間を要しますので、早くて半年程度、長い場合は2年程度を要することも。 |
遺産分割調停とは、裁判所を仲介者とした当事者同士の話合いの場です。ここで話合いが付かない場合は、「遺産分割審判」という手続に移行し、裁判所が判断を下すことになります。しかし、紛争が長期化すると、その間、財産の運用ができなくなって非効率ですし、相続人も亡くなったりして相続人が増えてしまうこともあります。
争いが大きく、長期化する前に、当事者間の意見や争いのポイントは何か、などを整理し、なるべく早期に紛争を解決することが、誰にとっても大切になってきます。
次のページは、遺産相続をしない方がいいケースについて、お伝えします