寅さんのビジネス
寅さんがよく売っていた古本。あの名調子が懐かしい |
"フーテン"の寅さんですが、無職じゃありません。旅から旅にさまざまな物を売る路上販売人です。テキヤ、香具師(やし)と呼ばれるこうした人たちは、各地の祭や市(いち)の立つ日に、寺や神社の境内などでさまざまな商品や軽食を売って暮らしを立てています。その歴史は古く、独自のコミュニティと文化を持っています。
そんな寅さんが売っていた商品といえば、
食器 縁起物の鶴 古本 張子の虎 ネクタイ 健康サンダル ウィーン製直輸入バッグ(この回、初の海外ロケ)
などなど…
時には易者になったりもしていました。
「バサ売(バイ)」「啖呵売」「泣き売」など、さまざまな手法があったこれらの路上販売ですが、威勢のいい寅さんの口上は「啖呵売」ですね。聞きほれてしまうほど流暢な立て板に水のその口上に、思わず要りもしないモノを買ってしまった人は多いことでしょう。そう、寅さんの本当の売り物とは、戸板に並べたその商品ではなくて、あの人をひきつけてやまない話術だったのですね。
寅さんがトランク一つで生きられた理由
寅さんが産湯をつかったという帝釈天。参堂にはおいしいお店がいっぱい |
旅から旅への暮らしの間、さまざまな女性(マドンナ)と出会っては別れた寅さん。
居所を定めず、人生そのものを旅と考えるようなその暮らしに、永遠のロマンを感じる人も多いでしょう。
その姿は、中世の西行、近世の芭蕉、近代の山頭火を思い出させます。
おいちゃん、おばちゃんが顔を出しそう! 昭和の茶の間 |
トランク一つが寅さんの全財産でしたが、48作のうちに交流したマドンナたちや家族と紡いだ物語こそが、寅さんのほんとうの財産で、それはとても豊かなものでした。今日寅さん映画を見る私たちの心の中に、鮮やかによみがえるその物語が、それを教えてくれます。
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