ホタルが放つ光には、クラッシック音楽とよく似た1/fゆらぎという周波数があり、人の心を安らかにする、癒しの力があるといいます。
その研究の第一人者が、板橋区ホテル飼育施設の所長、阿部宜男さん。ホタルの光の研究で、茨城大学大学院から博士号を授与された理学博士です。
というと堅苦しいですが、ご本人に会うとびっくり。金髪に金色アクセサリーが首からじゃらじゃら。タバコをくわえつつ、長靴にエプロン姿で、「どうも!」と現れます。
高校時代は暴走族、大学は中退。縁あって、板橋区の職員として動植物の飼育に携わったのち、たった1人で、ホタルの飼育施設を運営してきた阿部さん。見た目からしてタダ者ではありません。

ゲンジホタル。中流域のやや上流に生息し、見頃は6月初めから中頃。(写真提供:ドライブガイド上田泰久


平和的な生き物だからこそ、癒し効果がある

「ここのホタル施設は今年で18年。施設内のせせらぎで、毎年卵を産み、世代交代を繰り替えし自生してます」と阿部さん。
これは実はたいへんなこと。せせらぎの水の栄養や、ホタルの幼虫のエサとなるカワニナが生育できる環境にしか、ホタルは住めない。日本全国にいたホタルはこの環境が保てないために、減少の一途をたどっているのです。
ホタルの生育環境の研究に取り組んできた阿部さんは、今では全国74カ所のホタル生育地域と契約を結ぶほど、ホタル自生のための研究に尽力し、そのノウハウを培ってきました。

ホタルの幼虫のエサのなるカワニナ。川辺に生息する巻き貝。

飼育施設には15メートルほどの屋内型の人工のせせらぎと屋外施設があり、その中で、エサとなるカワニナや川魚、さまざまな植物が育ち、ホタルに至ってはゲンジ、ヘイケあわせて1万匹が生育しています。
「ホタルはもともと、平和な生き物。敵となるものがいないし、闘争心がない。虫にはめずらしく共食いもないんです。また、幼虫時代はカワニナという貝を食べる肉食ですが、成虫になると、草の上にたまる露を飲むだけ(ほたるこい、の童謡そのもの)。7日から10日ほどの間に、恋をして子孫を残し、死を迎えます。そういう平和的な個性が、癒し効果につながるのかもしれませんね」と阿部さんはいいます。


ホタルの放つ光は恋のためのもの。
火垂と書いて、ホタルと読むのは、オスがメスに向かって、光を放ちながら垂直にすっと落ちていく様子から来たといわれています。まさに恋の炎となるホタル。
彼らの光には癒されるものと、そうでないものもあるらしいのです。

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