ハリー・ポッターのロケ地として使われたキングス・スクールの外観 |
「最高の教育を」親の思いは万国共通
イギリスの「パブリック・スクール」というと、例えばよく耳にするイートン、ハロウ、ラグビー等。格式高く、お金持ちの学校、将来のエリート、紳士・淑女を教育する学校というイメージが一般的にないでしょうか? 実際、わが子を国際的なエリートに育てたいと思う親の気持ちは各国同じようで、欧米諸国や中東、アジア諸国の大富豪のご子息、ご令嬢は親元を離れてイギリスのパブリック・スクールやスイスの学校に留学、なんていう話しを聞きます。遠い海を隔て、日本の一般家庭の教育とは何だかかけはなれているため、漠然としたイメージと知識しか持ちあわせていないイギリスのパブリック・スクール。では、どんな学校のことを指すのでしょう?イギリスでは私立学校を「Independent School」、公立学校を「State School」と言い、パブリック・スクールは高い授業料を払う「Independent School」に属します。もともと王侯貴族や僧侶等、国のために高い教養を求められていた特権階級の人々のための教育機関だったものが、中世期以降には学校として設立され始め、授業料を払えば階級に関係なく誰もが入れる(Public)ようになっていった推移があります。だからと言って私立校であれば全てパブリック・スクールになるのかと思えばそうではなく、英国社会でのエリートと呼ばれる人々、例えば政治家、学者、医師、弁護士、企業家などを輩出してきた長い歴史と実績を持つ学校、名門のボーディング・スクール(寄宿制の私立中等学校)がそれに該当します。パブリック・スクールの定義や法律などはなくて、現在では校長がHMC(Headmasters’ and Head mistresses’ Conference)と呼ばれている校長会議に加入を認められている私立学校で、教師の質やその教育内容、設備など学校の水準が一流とみなされている全寮制、全日制の学校と考えてよいようです。
パブリック・スクールでは、大学進学につながる高い学力をつけられるその教育カリキュラムだけでなく、知的教養と強い精神を兼ね備えたひとりひとりの人格形成に力を入れているのも魅力のひとつ。伝統的なパブリック・スクールは、校長をはじめ、教師や学校のチャペルの聖職者といった学校の主なスタッフがキャンパス内に住み、寮監であるハウスマスター、ハウスミストレスは寄宿制の生徒と寝食を共にします。ハウスマスター、ハウスミストレスは有能な教師が任命され、寮生活を通して生徒は教師、目上の人を敬う態度やマナーを身につけていくのです。当然のことながら罰則もかなり厳しいようで、入学する前に同意し、署名した校則に違反すれば罰則が科され、重大な違反行為は即退学となってしまいます。
そうした教育水準の高いパブリック・スクールに入るため(子どもを入らせるため)、その下には準備校となるプレパラトリ・スクール(プレップ・スクール)というのがあります。イギリスの私立校では中等教育(Senior school)前の初等教育(小学校)はJunior schoolと呼び、5歳から11歳までの6年間になります。このプレップ・スクールにも名門プレップ・スクールというのがあって、名門パブリック・スクールと特別なコネクションがあったりするため、目標のパブリック・スクールを決めて、子どもにプレップ・スクール入学の準備を幼少からすすめていく親も多いようです。そしてこうしたプレップ・スクールには2~3歳から5~6歳までの幼児を教育する学校(プレ・プレパラトリ・スクール)というのがあり、上のプレパラトリ・スクールに付属している学校が多いのが特徴です。パブリック・スクールに入るために、名門プレパラトリ・スクールへ、名門プレパラトリ・スクールに入れるためにプレ・プレパラトリ・スクールへ、と何だか日本の「お受験」に似ていますね。子どもの教育に熱心なママ、パパたちはパブリック・スクール入学を目指すため、お受験対策を2~3歳ですでに始めていて、私の知人によると「2~3歳では遅すぎる、子どもがお腹の中にいるうちから始めなきゃ、なんて言う人もいる」のだそう。子どもを優秀な子に育てあげたい、という親の思いはどこも同じなのですね。ただ日本と大きく違う点はイギリスの場合、ほとんどの名門ジュニア・スクールには試験がなく、財力、家柄で入学が決まります。成績がいいだけではダメなのです。ある意味日本より厳しいかもしれません。
■関連サイト
映画「ハリー・ポッター」のロケ地、キングス・スクールへ体験入学!
取材協力/英語子育て支援サイト「Global Bridge」
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