中国の男性は緑の帽子をかぶりたくない
中国の帽子屋さんに、緑色の男性用帽子は決して売られることはない…と、そういう実際の意味ではありません。中国でも緑色の帽子は売られているとは思いますが、言葉のやりとりの中で男性が「緑の帽子をかぶせられる」ことは不名誉なことで、場合によっては相手を侮辱する言葉になります。なぜなら載緑帽子(緑の帽子をかぶる)は「妻を寝取られた男」という意味だからなのです。
なぜ、緑の帽子なの?
一説によると、妻が不貞を働いた男は緑色の帽子をかぶるべし、と明の時代に法律で定められていたことから現代までその言葉が残っているとか。なぜ緑の帽子なのか、という疑問は残るにせよ、法律が起源ならばなるほどそうか…と納得できる感じがします。もう1つ、この言葉には亀起源説(便宜的に命名)があります。
日本での亀は、「うさぎと亀」の昔話にあるような忍耐強い勤勉なイメージ、銭亀のお守りなどの金運をもたらすイメージのほか、鶴と並んで長寿やおめでたいことの象徴的なイメージがある動物で、ネガティブな意味はあまり聞いたことがありません。中国でも同様に、亀には長寿のイメージがありますが、不思議なことにネガティブなイメージもつきまとっているのです。
不貞のイメージがつきまとう亀
まず亀のメスは【一度にたくさんの卵を産む→誰の子かわからない卵を産む→不貞の妻】というイメージで捉えられている動物です。卵をたくさん産む動物は亀に限ったことではないと思うのですが…なぜか亀がやり玉にあげられています。(もしかしたら中国の神話や伝承の中に理由があるのかもしれませんが残念ながら現時点では理由を突き止められませんでした)
【王八】[wang2ba1]は、亀を表す俗語ですが、これは【忘八】[wang4ba1]から来た言葉だと言われています。
【忘八】は「八徳を忘れた者」。八徳とは儒教の【忠・孝・仁・愛・信・義・和・平】のことです。つまり【王八】はこれを忘れた者=ばかもの、ろくでなしということになるのです。人に対する罵り言葉として使われることもあります。
これらネガティブな亀のイメージを踏まえた上で【亀は緑色→亀は首をすくめて甲羅の中に入る→緑の帽子をかぶる】=寝取られ夫の意味に使われるようになったという説が、亀起源説です。
また、亀は首をすくめて甲羅の中に隠れることから、不甲斐ない男という意味に使われることもあります。どっちにしろ、亀にとっては不名誉な例えをされてばかりでお気の毒ですね。
【王八】という言葉を使わず、【烏亀】[wu1gui1](亀の正式な呼び方)を使ったとしても、話の文脈によっては立派に侮蔑語として機能します。
生き物の名前を使った罵り語として、日本語なら例えば「このタコ!」などがありますが、中国語のカメのほうがずっと意味合いが深く破壊力も大きいわけです。日本語のタコには、多分そう深い意味はないようですので…。
以前ヒットしたテレビドラマ「スチュワーデス物語」では、主人公がよく自分のことを「ドジでノロマな亀なんです」と言っていました。
もしもこのドラマが中国で直訳で放映されたら中国人は主人公を「なんたる不道徳な娘だ!しかも自分からそんなことを言うなんて!」と憤慨するかビックリすることでしょう。
緑の帽子の話から少し横道にそれたところで亀にまつわる重要な注意を次のページで!