フランス/フランスの観光・世界遺産

やっと来ましたシャルトルーズ。後編はカーヴ潜入 早春、リキュール蔵元を訪ねる(2ページ目)

霧、そして雪。さんざん迷ったあげくやっと着きましたシャルトルーズ。いよいよ地中深くカーヴに潜入、神秘のベールに隠されたその門外不出の製法を垣間見ます。え、カメラも持ち込み禁止なのか!

執筆者:赤木 滋生

シャルトルーズの歴史が迫力の3Dで


ぞくっと寒いカーヴにはすでに調合され永い眠りに付いたシャルトルーズの大樽が。直径は大きいもので3メートル以上もありそう。
レセプションにはツアーの待ち時間をつぶす為の展示があるので見ていると、あれどこかで見た景色が。これはどう見ても昨日雪にびくつきながら迷い込んだガリビエ峠への道のオーバーハングだ。ひょっとしてあの迷い道は聖ブルーノのお導きか?残念ながら雪に阻まれグラン・シャルトルーズの中までは行けなかったもののきっと何かの縁、その内もっと暖かい時に再訪しよう。

そんなことを考えているとガイドの方がやって来てちょっと早いけれど始めましょうかと中へ案内してくれた。ツアーはまず映画で始まる。シャルトルーズの簡単な歴史やトリビアなどのプレゼンテーションを受けたあと、樽詰のエージング(熟成)を行うカーヴ(貯蔵所)に移動、次に蒸留と薬草エキスを添加する蒸留所を見学する。ちなみにこの蒸留所はレシピはもちろん醸造ラインも秘中の秘としてカメラの持ち込みは禁止されてしまう。そして最後はたくさんの製品の中から好みのシャルトルーズを選んでテイスティングだ。

この映画がまた凝っている。まず席につくと配られるのは眼鏡。すすめられるままそれをかけて画面をのぞくと役者の突き出す槍が鼻先にぐぐっと迫ってくる!なんと3D画面の大迫力だ。あの山奥のその又奥に修道院を切り開き、やがてシャルトルーズを生み出し、リキュールの王様になるまでの成り立ちを教えてくれた。

裸電球のほの明かりに照らされる巨大な樽


樽の正面には仕込んだ年号と種類、アルコール度数が書き込まれ、インジケーターで量も分かる。年々少しづつ減ってゆくのは天使の取り分。
今までシャルトルーズの味しか知らなかったが、長い歴史と紆余曲折の予備知識を仕入れてすっかりこのお酒に対するイメージが変わってしまった。フランスの華やかでノー天気な宮廷文化から生まれたとばかり思っていたが、実はなんともストイックで神秘的。その神秘性をさらに増幅させるのがカーヴ。はだか電球の乏しい薄明かりにぼうっと浮かび上がった全部で165ある巨大な貯蔵樽の群れは、まるで地下のダンジョンに眠る怪物どものようだ。

カーヴの所々にはかつて修道僧たちが機械の助けなしに行っていた手作業での醸造や調合の様子をオリジナルの道具とロウ人形で再現してありよけいに不気味。しかも空気はじっとりと湿り気を帯び昔ながらの酵母が壁や天井に張り付いている。あまり夜一人では入ってゆきたくない所だ。
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