フランス/フランスの観光・世界遺産

夏の地中海に躍る色彩 カマルグを描くゴッホ(2ページ目)

アルルの南、白馬が駆けめぐりフラミンゴが舞う大湿原カマルグ。1888年パリから移り住んだゴッホは、その年の6月、地中海に面した小さな村で色彩あふれる多くの名作を残しました

執筆者:赤木 滋生

サント・マリー・ド・ラ・メール
そんなカマルグの中心はサント・マリー・ド・ラ・メール(Saintes Maries de la Mer)。海の聖マリアという名前のとおり、聖母マリアの妹、マグダラのマリア、ヨハネの母の3人のマリアが召使のサラとともにここに流れ着き礼拝堂を建てたのが始まりとか。その召使サラはジタン(ジプシー)の守り神。そのため昔からジタン(ジプシー)巡礼の町として栄えてきたそうで町も人々もどこかスペイン風のエキゾチックな香りがします。

ゴッホが訪れたのは6月、水もぬるみ今ならそろそろバカンス客も集まり始める絶好の季節。そこで同じ時期に我々もカマルグを訪れてみることにしました。

アルルからD570に乗って田園の中を南西に向かえば、30分も走らないうちにぽつぽつと沼が目に付きはじめる。あちこちで白馬や水牛がのんびりと草を食んでいるかと思えばフラミンゴの群れが水辺に舞い降りて来たりします。ここはもうカマルグの真っ只中、サント・マリー・ド・ラ・メールはすぐそこです。

サント・マリー・ド・ラ・メール観光局

独特の民家とジプシーの香り
道ばたの民家がちょっぴり変わっていて、真っ白な壁にかやぶき屋根、平屋の棟が連なっています。昔と同じシルエットのかやぶきの家々、煙こそ見えないものの屋根の途中からにょっきり突き出している煉瓦煙突もゴッホの絵そのままです。

近づいてみると軒先は頭より低く、家のほとんどが屋根のような造りも、棟がしっかりと漆くいで固められているのもきびしい春先の海からの強い風に備えてのことだそうです。昔は野生であったと言う白馬のつながれている牧場も、星の記された看板が正面に立つホテルもすべてこの低い軒の特徴ある形式をかたくなに守り、周囲の雰囲気にすっかり溶け込んでいます。

暗く寒い冬のパリから暖かい南仏に移り、次第に光りがあふれて行く中で、ゴッホの絵も印象派的技法の実践から次第に構図が大胆になり色彩構成が斬新になって行きます。浮世絵をほうふつとさせるこの力強さはどうでしょう。
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