■ルネサンスの香りブロワ城に渦巻く嫉妬と陰謀の嵐
さて摂政となったカトリーヌ、次男シャルル9世とともにブロワ城に居を構えると、まだ幼い息子のお尻をたたきつつ、持ち前のバランス感覚と狡猾さを駆使して宮廷に出入りする実力者達や、周りを取り巻き野心満々に媚を売りまくる女性達を翻弄します。
政略結婚はもちろん、浮気、近親相姦、など当たり前。実の娘であり国王シャルル9世の妹でもあるマルゴも例外ではありません、しっかりカトリーヌに利用されました。彼女は王家の悩みの種、新教徒のアンリ・ド・ナヴァールと好きでもないのに政略結婚させられてしまいます。ところがこのマルゴもちゃっかりしたもの、いけ好かない夫とは距離を置きつつ浮気三昧。この夫もまた別に愛人を作り、互いに浮気につぐ浮気の奇妙な結婚生活。愛は無いがなぜか仲は良いと言う摩訶不思議でした。
アンリといえば王位を虎視眈々と狙う旧教徒の有力者ギーズ公もアンリなら、カトリーヌの3男、国王シャルル9世の弟もアンリ3世。この3人のアンリをめぐりカトリーヌの駆け引きに活躍したのがこれまたイタリア仕込み、メディチの毒薬です、おおこわ。彼女の嫉妬や陰謀は度重なる毒殺合戦や宗教戦争の激化を引き起こし、天下の悪女との評判がすっかり定着してしまいました。
後国王となったアンリ3世はカトリーヌとともにギーズ公を毒殺。自らも毒殺され、同じ頃カトリーヌは病で死んでしまいます。これでとうとうカトリーヌの思惑はすっかり外れてしまい、当時の王家ヴァロア家は断絶してしまいました。結局生き残ったのはマルゴの夫アンリ・ド・ナヴァール。彼がブルボン家のアンリ4世として以後のフランス絶対王政の基礎を築くことになりました。
シュノンソー城から程近いロワール川右岸にあるブロワは現在も落ち着いたたたずまいを見せ、街の真ん中にある小高い丘の上に城は重々しくそびえています。門を入れば大きな中庭が広がり、右手にこの城のハイライト、ルネッサンス様式の優雅な螺旋階段が見えます。
中庭の周囲は宮殿。中には豪華な調度、華やかなタペストリーとともに、国王毒殺の間などが残されており、すこし薄暗い照明とあいまって毒殺された国王らの亡霊でも出てきそうな雰囲気です。もう一つ有名なのが占星術好きのカトリーヌのお気に入りの占星術師。前世紀末何も起こらなかったことで名を下げましたがあのノストラダムスも一時ここに出入りしたそうです。
さて、最後の悲劇はアンリ3世の妻ルイーズです。