つまり、Bの事実を思い出したくないために、Cの事実を前面に押し出してあたかもそれが重要事項であって、思い出したくない事実=Bをたいしたことではないと思う、一種の心理的な自己防衛なのではないか…。そして身内には話せないが、自分一人だけでは抱えきれないので、匿名で話のできる電話で誰かに話したかった…。
とすればなんと痛々しいことでしょうか。まだホンの十代の少女が殺されそうな恐怖を味わいながら、無意識のうちにそれを否定する。この話を知り合いの記者に話したところ、
「そうかもしれないが、少女Aは本当にメモリを消されたことだけが悔しくて、ヤラれたことは本当にどうでもいいんじゃないの? 今時の女の子なんてそんなものかもしれないよ」と言うのです。あなたの考えはまとも過ぎるのかもしれないよと言われると、なんともいいようがありません。こればかりは当人に確認してみないとわからないことです。
「援助交際」「プチ家出」などといって、十代の女の子たちが街を漂流しています。この少女Aのように「死ぬほど恐ろしい目に遭う」子もいるはずです。少女Aのケースの男は似たようなことを、似たような少女にやっているはずです。なぜなら少女Aに似た子はたくさんいるからです。
以前聞いた話では、やはりしろうとの女性が見知らぬ男とホテルに行って、いきなり顔にわけの分からないモノを塗りたくられて、あまりの熱さと痛さで絶叫したといいます。
男は逃走して、彼女は顔面に残るやけどのあとに深く後悔していますが、やはり警察には届け出てはいないとのことです。自分が売春行為をした上での被害ということで躊躇したのでしょう。
またほかにも、男にお金を奪われたとか、身分証を取られてその後脅されたとか、コワイ話はたくさんあります。男がスタンガンで脅されて少女たちにお金を奪われたという事件もありましたが、やはり女の被害のほうが多いのではないでしょうか。
少女Aのケースは、まさに売春婦殺しの「切り裂きジャック」事件を彷彿とさせます。犯罪は必ずエスカレートするものです。バッグを切り裂いた男がいずれ女を切り裂く日がくるかもしれない…。
そんなことは考えもせず少女たちは、今夜も繁華街をさまよっているのでしょう。声をかける男たちの中に「切り裂きジャック」がいるかもしれないと疑うこともなく…。
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