「見えない家族」
「私のつくえ、じぃじの家にもあるんだよ」。え?! つくえがふたつも、どうして? |
先日、ガイドの耳に、ふいに入ってきた単語、『インビジブル・ファミリー』。
目に見えない家族?「何それ? お化け?!」 訊いた瞬間、ホラータッチなコメディ映画のイメージが頭を過ぎりましたが、どうやらそういう意味ではないようです。
Familyにかかる“invisible”の指し示すところとは?
いま世に出でたる『インビジブル・ファミリー』という言葉から、この時代の住まい方の一片を考えてみたいと思います。
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『インビジブル・ファミリー』って何?
「おじいちゃんちのミニバン、おばあちゃんちのチャイルドシート」
『インビジブル・ファミリー』へ至る道
“invisible”から“visible”に
『インビジブル・ファミリー』って何?
この単語を世に知らしめた(?)のは、先日3月6日に放映された、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』でのレポートでしたが、元は野村総合研究所の報告で、昨年12月に発表されています。このパブリシティを参照して、『インビジブル・ファミリー』という語の意味を定義すると、「同居はしていないが、経済的・精神的に支えあう家族」。すなわち“擬似同居家族”……つまり、「今ここには見えないけれど、ちょっと離れたところにいる家族」=“invisible”familyということのよう。
親世帯にとっては、健康面・安全面での不安が軽減でき、子世帯にとっては子育ての精神面・経済面での負担が軽減できる住まい方として、今後どんどん増加していくと目されています。また同研究所による、「2006年NRI生活者1万人アンケート調査」によれば、『近居』や『隣居』をしているファミリーの割合は、1997年から2006年までの10年間に、28%から41%まで増えているといいます。
ここで『近居』というのは、親子が片道徒歩十数分圏内に住まうことを指し、『隣居』は電車などを使っても片道約1時間以内に住むことを指すそう……
……と、アレッ、既視感?!……「……って、なんだかこないだの“近居”ものがたりの枕と殆ど同じじゃないの?」……そうなんです、かぶるんです。データの出典もそれぞれ異なりつつ数字は似通っている、でも微妙に定義は異なっているなど(件の記事引用の『NPO活動を含む「多業」と「近居」の実態等に関する調査』によれば、「クルマ・電車利用の片道1時間以内居住」も『近居』に含まれる)。
それだけ「このテーマ」への、各方面からの注目度がいままさに上昇しているということの証とも思えますが……(大和ハウス工業株式会社による『近居・育孫(きんきょ・いくまご)』というレポートも発見しました。2007年12月のプレスリリースです)。
まぁ、こう言われてみると、厳密な『近居』かどうかはともかく、「我が家もいわゆる『隣居』と言えば言えなくもない程度の『近居』?」 などという方は、実際のファミリー層には多数おられるのではないでしょうか。
そも元々、実家が首都圏の郊外にあり、現在子ども世帯だけが都心に住んでいるなどといったケースの場合、かなりの割合で『隣居』には当てはまってしまうのではないかと思われます。また、現在ファミリー層の中心を担いつつある団塊ジュニア世代というのは、その過半数が首都圏育ちだとするデータもあります。
しかし「じゃあ何だ、結局『インビジブル・ファミリー』って、要は親と『近居』してるってだけのこと?」と合点、……するのはいささか早計というものです。野村総合研究所の報告に戻りましょう。
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