きれいごとで「子ども部屋」を考えない
便利なインターネット。その暗黒面が子どもを狙っている… |
「子ども部屋に、女子高生を拉致して住まわせ暴行、殺害」「子ども部屋に、子どもたちを拉致監禁して殺傷」「子ども部屋に、殺傷した動物を保管、そののち遺棄」「子ども部屋に、小学生女子を拉致して監禁、10年近く隠し通す」「子ども部屋に死体を持ち帰り隠す」etc...
ぱっと思いつく限りでも、ここ十数年の間に起こった「子ども部屋」絡みの犯罪はこれだけ挙げられます。皆さんの記憶にも強烈に残っていることでしょう。幸い、私たちはそんな犯罪を犯さず、また幸運にも、犯罪に巻き込まれず大人になれた。でも、この先のことは、まだ分かりません。
「子ども部屋」というものが「親の目を盗める場所」「親の目に触れない場所」であり続ける限り、いや、「親が見たがらない場所」であり続ける限り、可能性としてどの家庭の「子ども部屋」が陰惨な犯罪の舞台にならないとも限りません。
携帯電話が「子ども部屋」を個別に外界へつなげてしまう。 |
現在は、私たちが育ってきた過程ではなかった二つのツール、『携帯電話』と『インターネット』が「親の目を盗んでする行為」をエスカレートさせています。出会い系がらみの犯罪、売春がらみ、恐喝、自殺幇助…これも数え上げてもキリがないほどです。
勿論、「子ども部屋」が私たちの育ちに大きく、良い影響を与えた側面を忘れることは出来ません。思春期に、個室で自分の心とじっくり向き合い、親と自分を切り離して考えることを覚え、恋に悩み、進路に悩み、でも苦しみから這い上がるすべを手に入れて「自立」への道筋を勝ち取ることができた。それは確かです。それに静かな環境で集中してした勉強の成果は、目を見張るものがあったかもしれません。
いま、私たちは冷静に、「子ども部屋」という部屋の持つ明暗を見据え、子どもたちに与えて(或いは、子どもたちが独立して勝ち取るまで与えないで)いくか・いかないかを判断しなければならないときに来ています。
親の世代や昭和40年代以前に子ども時代を送った世代が、自分たちの「憧れ」を具現化して子どもにプレゼントしたようには、無邪気に「子ども部屋」を考えることは出来ないのです。
21世紀の「子ども部屋」のあり方。それは今、多くのプロや親たちによって模索され、実験され、実践され、あるべきモデルがあちこちで示されようとしています。その正誤は、子どもたちの成長を待たねば判断できない点は、確かにもどかしい。
でも、どうか「小学校に上がったから」「10歳になったから」「受験だから」「家を買ったから」と安易に「子ども部屋」を与え、子どもをそこに閉じ込めないようにしてください。
「子ども部屋」──『個室』──を『孤室』や『独房』にしないために。
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子供室はどうすれば吉?(家相・風水)
「少女民俗学~世紀末の神話をつむぐ巫女の末裔」大塚英志/光文社文庫
「個室―引きこもりの時代」島田 裕巳/日本評論社
「子ども部屋―心なごむ場所の誕生と風景」インゲボルク ヴェーバー=ケラーマン (著), Ingeborg Weber‐Kellerman (原著), 田尻 三千夫 (翻訳)/白水社