CAたちが機内で出会った
忘れられない乗客たち
ほかに、彼女たちは乗客のどんな言葉や態度に好感を持つのでしょうか。私がCAたちに実際に聞いた話を、ここでいくつか紹介しましょう。まずはコーヒーを注文する際の乗客のちょっとした気づかいについて話してくれた、チャイナエアラインのCAの意見──。
「これはビジネスクラスのお客さまなのですが、トイレにお立ちになったついでに『あとでコーヒーをいただけますか?』とリクエストされ、そのときにご自分の座席シートの番号を言い添えてくださったんです。私はピンときました。ああ、この方は飛行機に乗り慣れていらっしゃるんだなって。ただ『コーヒーね』とだけ言ってさっさと行ってしまう方もときどきいらっしゃいますが、それだと、どの席にお持ちしていいのかわからないことがあります」
自分の顏はCAが覚えてくれている、と思いたい気持ちはわかりますが、それも個々のCAのキャパシティによるでしょうね。次は、すでに日系エアラインを退職した元国際線CAの話。
「好感の持てるお客さま、ですか? フィーリングが合うかどうかでしょうか。毛布1枚を頼まれるにしても、『ちょっと寒いんだけど、余っている毛布ありますか?』と聞かれれば『すぐ探して参ります』となりますが、いきなりぶっきらぼうに『毛布!』などと言われると、一瞬笑顔も凍ってしまいます」
実際にどんな口調で言われたのかはわかりませんが、要は言い方の問題なのでしょう。自分の女房をこき使うような命令口調になってしまっては、たしかによくありません。つづいて、ルフトハンザのCAから聞いた話。これはテクニックの一つとして使えそうです。
「お客さまからコートをお預かりするときに、こちらが要求しなくても搭乗チケットの半券をすっと差し出してくれるような相手には、ぐっと来ますね。そういうお客さまは英国の方などに多い。さすが、紳士の国だからでしょうか。またつい先日の話ですが、ジャケットをお預かりするときにこちらから搭乗券の半券をお願いしたら、にこっと笑ってそのジャケットの胸ポケットを指差したお客さまがいました。見ると、そこにちゃんと半券がささっていたんです。これはアメリカの方でしたが、ユーモアのセンスを感じましたね」
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