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最終便が到着するロンドン・ヒースロー空港の滑走路脇には、1,000人が座れる特別席が設けられました。空港周辺には最後の雄姿を見ようと、20万人を超える観衆が詰めかけたとも報じられています。10月24日、招待客や一般客、関係者ら計100人を乗せてニューヨークから飛び立った
ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)のコンコルドは、現地時間の16時に予定どおりヒースロー空港に到着。コクピットの窓から機長と副操縦士が身を乗り出し、ユニオンジャック旗を大きく振ると、待ち受けていた多くのファンたちの大歓声はいつまでも鳴りやみませんでした。
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写真は、
BAの広報を担当するPR会社の方が以前送ってくれた機内の様子です。スタイリッシュなボディだけに、中はかなり狭い。右のカットは「窓もこんなに小さいです」と実際にコンコルドに搭乗した人から届いたそうです。私はついに乗る機会に恵まれませんでしたが、手の大きさと比較すると、たしかにこぢんまりした窓ですね。それにしても、この最終便に搭乗できた人たちは何と幸運だったことでしょう。同便の航空券は、一人当たり4,350ポンド(約80万円)という高額にもかかわらず売り出し当日に即日完売。最終便のチケットをインターネットのオークションで入手した米国の夫婦は二人分で3万7,000ポンド(約686万円)を支払ったという噂も流れています。そこまでしても一度は乗ってみたいと思わせる魅力が、コンコルドにはあったのですね。
英仏両国が共同開発し、初飛行に成功したのが1969年。76年に商業運航をスタートし、ロンドンやパリとニューヨークを3時間45分で結んできました。最高速度は
マッハ2を超え、通常は7時間程度かかるロンドン・パリ―ニューヨーク間を半分に短縮したことになります。世界一速く美しい旅客機と称され、独特の翼の形状から
“怪鳥”の名で親しまれました。
その怪鳥も、時代に流れには勝てなかったようです。燃料費の高騰などで採算が合わず、開発した英仏の航空会社の
BAと
エールフランス(AF)が運航するのみでしたが、2000年7月には
エールフランスのコンコルド機墜落事故(死者113人)がパリ近郊で発生。世界に衝撃が走りました。事故後は両社ともに巨額の機体改修費の負担を余儀なくされ、2001年11月まで運航を停止していた経緯もあります。さらに
「9.11 米同時多発テロ」による大西洋線の旅客数激減などの影響を受け、AFは2003年5月で運航打ち切り。BAも10月24日でコンコルドの運航を終了すると発表したのです。
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世界初で唯一の超音速旅客機の歴史終焉を惜しむ声は少なくありません。その勇姿は、私たちの記憶の中にいつまでも留めたいですね。
BA公式サイトでは、コンコルド・ラストフライトの様子が動画でご覧になれます。また次ページに
《怪鳥よ永遠に! 保存版 コンコルド・データ集》を掲載しました。