アメリカ・デトロイト郊外の空港では昨年、ハイジャック騒ぎで警官隊が機体を取り囲む事件もありました。
発端は、乗客の一人が飛行機に乗り込んだ際のパイロットへのあいさつ。たまたまパイロットが顔見知りで、「ハーイ、ジャック」と声をかけたところ、ちょうど管制塔と交信していたパイロットが直後に無線スイッチを切ったため、管制官はハイジャック事件発生の通報だと早とちりしたらしい。慌てた管制官は地元警察に連絡。ただちにテロリスト対策の特別機動隊や連邦捜査局(FBI)が空港に駆けつけ、配置につきました。
狙撃隊が遠巻きに銃を構えるなか、パイロットは「何も異変は起きていない」と懸命に説明を続けたといいます。
騒ぎがおさまったあとで、地元警察署の署長は笑いながら言ったそうです――「おかげで、ハイジャック事件のまたとない初動訓練ができたよ」
たしかに離陸が数分遅れたことを除けば、このハプニングで実害は何もなかったから、笑い話で済むのかも知れません。しかし現代のハイテク旅客機の運航では、ちょっとした乗客のマナー違反がフライトに影響をおよぼすことがあります。たとえば──。
航行中にコクピット内の計器の一つがいきなり狂い始める。急いで原因を調査しても、理由が見つからない。機長が機内電話でキャビンに連絡し、スチュワーデスを呼んで「乗客一人ひとりにもう一度当たってみてくれ」と指示。やがてスチュワーデスがコクピットに戻ってきて、報告する。「キャプテン、解決しました。やはりお客様の一人が……」
そんなことが希に起こるそうです。原因は、そう、携帯電話。機内では必ず携帯電話のスイッチを切るよう呼びかけても、ときどき指示に従ってもらえない乗客がいるらしい。たかが携帯電話ぐらい、と思うのでしょうが、コクピット内の計器類や自動操縦システムは、ほとんど電波だけを頼りに動いています。携帯電話も立派な電波発信機で、そこから発信される電波は飛行機が受信すべき電波に影響を与えてしまう。現に、乗客に携帯の電源を切ってもらったとたん、狂っていた計器の針がピタリと正常に戻るということがあるそうです。
機内で繰り返し携帯電話を使用していた日本人乗客が、民間航空安全法違反の疑いで空港警察に逮捕される──外国ではそんな事件も現実に起きています。みなさん、フライトの際は必ず携帯電話の電源を切りましょう。そして、乗務員に「ジャックさん」という知り合いがいる人は……いや、そこまで心配する必要はない、かな?
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