
言いたいことが伝わらない、分かってもらえないのは寂しいことだ。ましてそれが大事なパートナーであればなおのこと。以前は分かり合えていたはずなのに、結婚生活を続けているうちに何かがズレていったのだろうか。
妻の言葉が嫌みに聞こえるようになって
「いつごろからかなあ、妻がやけに嫌みや皮肉を言うようになったんですよね。でもよく考えると、それは僕がそう受け取っているだけなのかもしれない。いつしか気持ちが合わなくなっていったんでしょうね」
顔をしかめながらそう言うのは、カズオさん(44歳)だ。6歳年下の妻と結婚して8年がたつ。一人娘は小学校に上がったばかりだ。
「小学校のお受験に関して、妻とはバトルがありました。どうしても私立に行かせたい妻と、体が小さい娘を電車通学させたくないから地元小学校でいいという僕。妻の両親まで巻き込んでいろいろ大変でした。そんな様子が娘に伝わったのか、受験3カ月前に娘が高熱を発してなかなか下がらず、入院したんです。娘にストレスを与えて申し訳ないと思った。でも妻は『あなたが私の言うことを聞いていれば、娘だってストレスを感じることはなかったのよ』って。ムカッときましたが、そこで言い返すとまた揉めますからね。結果的にはその娘の入院がきっかけで、妻と義父母は受験を諦めたようです」
とにかく娘の前では言い争いをしないようにしよう、娘の気持ちを大事にしようとそのときは話し合ったのだが、どうも妻は「言うことを聞いてくれない夫」に不満を持ち続けていたようだ。
自分が悪いことをしている気にさせられる
「夫婦の間でも、これを言ったら相手が傷つくかなということってあるでしょう。妻はそういう言葉を平気で言うんですよ。例えば僕が『帰宅時間は8時前後かな。大幅にズレるようなら連絡するよ』と言って出掛けたとする。たまたま仕事が早く終わって7時半くらいに帰ると、妻は『あら、もう帰ってきたの』とため息をつくように言うんです」
うっかり「早く帰ったらまずいの?」と言おうものなら、「何その被害者意識」とくる。もう帰ってきたのと言われると、帰ってこなくてよかったのにと言われているも同じだと受け止めてしまうのだとカズオさんは言う。
「いちいち傷つくから言わないでほしいなとやんわり言ったんですが、『仕事ができなくて早く会社から追い出されたのかと思った』と。妻は大笑いしながら、『冗談に決まってるでしょ。まだ帰らないと思っていたところへ帰ってきたから、もう帰ってきたのと言っただけ。過剰反応よ』と言っていました。なんだかムカつくんですよね……」
オレたち、なんだか会話がスムーズにいかないよねと言ったこともある。だが妻は「私はそう思わないけど?」と彼の顔をじっと見つめた。
「まるで僕が悪いことをしているような気にさせられました」
そんな妻と、どうやって気持ちを共有するような会話ができるのか。カズオさんは日々、悩んでいるという。
夫はたぶん私を下に見ている……
「夫は勤務先の人事部に所属しています。このところのパワハラ、セクハラなどには敏感で、かなり研修も受けている。でも私生活では、やはり私を下に見ているなと分かるときがあるんですよ」
エミさん(40歳)はあきれたような表情でそう言った。外に向かっては「僕なんか妻の言いなりですよ」と冗談めかして言っているが、家の中では「きみの言っていることは本当に正しいの?」と詰めてくるタイプだという。
「結局、私が折れると、自分の意見が通ったというより、自分が私の意見を聞いたというふうに話をすり替えてしまう。だから外では妻の言いなりですよと言うんでしょうね。私は何か言うと、反対意見を持ち出して『きみは正しいの?』と言ってくる夫がうっとうしいし、怖い」
結婚前は、何でも話し合う関係だった。とはいえ、今振り返れば、「最終的には言いくるめられていたところもあったと思うけど、私が彼を好きだったから気付かなかった」のかもしれない。
「家事育児は女の仕事」と思っている夫
結婚して6年、5歳と3歳の子を抱えながらフルタイムで働いているエミさんだが、夫は自分もきちんと家事を折半してやっていると思い込んでいる。
「夫がやっているのは子どもたちを保育園に送っていくことと、週に1回の風呂掃除だけなんですが、自分は子煩悩で家事も完璧にやっていると思っているみたい。私がどうしても残業で帰れないとき夕飯の支度をしてくれることはありますが、それは私が作っておいたおかずを温めるだけ。もちろん食器はキッチンに置いたまま。せめて水につけて置いてと言ってあるけど、そこまではやらないですね」
それでも夕飯の用意をして子どもたちに食べさせたのだから、何か文句ある?と夫は言いたげなのだという。
「夫が言外に『家事育児は女の仕事でしょ』と思っているのが分かるんですよ。何かあると子どもに向かって『やっぱりママがいいよねえ』と言ったり、『こういうことは女じゃないとな』と言ったり。そのうち私、過労死するかもと言ってみたら『きみは大丈夫だよ』ですって。子どものために今は必死で頑張っていますけど、きちんと会話が行き交わない夫と、どうやって生活していけばいいのかと時々暗い気持ちになります」
話し合えない、寄り添えない。そんな思いを抱えながら日常生活を送るのは心労がたまっていくばかりだろう。







