
総務省の2025年国勢調査によると、25~29歳の未婚者のうち、約4割が親と同居しているという。一方で30代以上で結婚する気がない人たちも増えている。実家暮らしにはそれなりにメリットがあるのだが、もちろんデメリットもある。そのあたりを実際に実家で暮らしている30代、40代はどう考えているのだろうか。
経済的には圧倒的に楽
「私は実家にまったくお金を入れてないんですよ。親がいらないと言うから。その分、貯めておきなさいって。その言葉に甘えて、収入の半分は貯蓄や投資に回しています」
アユさん(33歳)はそう言う。20代後半で結婚を考えたこともあるが、相手が転勤族だったため、「自分が仕事を辞めて、夫についていくだけ」の生活を現実的には考えられず、2年の交際に終わりを告げた。転勤族だということは最初から分かっていただろうと彼に責められたが、「あなたが転職する選択肢もあるんだよ」と反論し、破局した。
「それからはほとんど誰ともつきあっていませんね。余暇は趣味に生きています。大好きなミュージシャンの推し活をしたり、ピラティスや料理を習ったり。もちろん仕事も頑張っています。社内の昇進試験もなるべく受けるようにしていますし」
おまけに実家は駅近で、勤務先まで30分もかからない。一人暮らしをしようとしたら、都内に住むのは家賃が高過ぎて無理だから、通勤時間は3倍くらいになりそうだという。
「母は60歳になったばかり、父は62歳で現役で働いています。2歳違いの兄がいますが、3年前に結婚して子どももいる。甥っ子は私に懐いているので、まるで子育てに参加しているような気持ちになれる。別にわざわざ結婚して苦労する必要もないわよと母に言われて、納得しています」
結婚して苦労する必要はない
周りの友人たちも独身と既婚が半々。既婚者は子育てで忙しく、なかなか会えないので、独身同士で集まっては楽しんでいるそうだ。
「親の介護、どうするんだろうという話になることもありますが、そのときはそのときですよね。親は自分たちで考えるからと言ってくれています。何があるか分からないけど、今のところ心配しても仕方がないですし」
かつてと違い、未婚の30代がいるからといって近所で話題になることもない。幼なじみの母親などは、「いいわね、うちなんて結婚した娘が遠くへ行っちゃって寂しくてたまらないわ」と言っているという。
「このまま40代になったらと考えることもありますが、まあ、それも悪くはないかもと思いますね」
結婚して苦労するくらいなら今のままでいい。そう腹をくくっているそうだ。
楽だけどストレスもたまる
「経済的には楽だけどストレスはたまりますね」
そう言って苦笑したのはモエコさん(42歳)だ。大学を出て就職してから一人暮らしを始めたが、30歳のときに勤務先が倒産した。その後、なんとか再就職はしたものの、思うように給料が上がらなかった。住む場所さえあればと中古マンションの購入も検討したが、その矢先に子宮がんが見つかった。
「病気は治りましたが、ローンを払っていく自信がなくなって……。それでも一人暮らしに固執していたんですよ。母との折り合いがよくなかったから、同居だけはできないと思っていた。ただ、私の病気を知った母が、『戻ってくれば』と言いだして。一人で頑張るのに力尽きて戻ったのが5年前です」
父はすでに亡くなっており、70歳近くなった母も一人暮らしに不安を覚えていたのかもしれない。互いに干渉しないという約束で始まった同居生活だが、「母にいつも監視されているような気がする」とモエコさんは言う。
帰ったら自室にこもる日々
「休みの日に出かけようとすると、どこに行くの、何時に帰ってくるのと、子どもに聞くようにしつこいんですよ。友達と旅行にいくといっても『私を置いていくの?』って。母もそれなりに年金も預金もあるようだから、旅行くらい行けるはずなのに。どうやら友達がいないんですよね。一人でどこかに行った経験もない。勤めたこともほとんどない人だから、世間も視野も狭い」
私にはかまわないでと言うと、「出ていってもいいんだよ」と平然と言う。最初はもう少し優しかったのだが、あまりかまってくれない娘にイライラを募らせているようだ。それはモエコさんも同じである。
「フラストレーションがたまりますね。平日はなるべく一緒にいないように遅く帰ることにしています。帰ったら自室にこもる。最近は休日も振り切って出掛けることが多くなりました。いっそシェアハウスみたいなところに越そうかなとも考え始めています」
同居するなら親との関係を改善してからの方がいいと、モエコさんは真剣な表情で言った。
<参考>
・「令和7年国勢調査 調査の結果」(総務省統計局)







