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「生涯現役=働き続ける」ではない……高齢期にただの「ケチ老人」で終わらないお金の使い方

老後を考えると、できるだけお金を残しておきたいもの。しかし「使うこと」にも大きな意味があると精神科医・和田秀樹さんは指摘します。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

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「貯める」だけが老後のお金との正しい付き合い方なのでしょうか。※サムネイル画像:PIXTA
「貯める」だけが老後のお金との正しい付き合い方なのでしょうか? ※画像:PIXTA

年齢を重ねても「現役」でいるために、働き続けることだけが選択肢ではありません。高齢者だからこそできる、意外な社会との関わり方があります。

高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏の著書『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』では、年齢にとらわれず、自分らしく人生を楽しむための思考法を提案しています。

今回は本書より、高齢者が「現役の消費者」としてお金を使い、社会に関わり続けることの大切さとその真意について一部抜粋して紹介します。

目次

「現役=働き続ける」ではない

ずっと現役でいたいと望んでいる高齢者は多いでしょう。「老いと闘えるうちは闘う」という観点からも、可能なかぎり現役でいたほうがいい、と私も思います。

ただ勘違いしがちですが、「現役」イコール「働き続ける」ではありません。高齢者が働き続けるのは大事ですが、同時に、「現役の消費者」であり続けることも大事だ、と私は思っています。

なぜかといえば、高齢者が現役の消費者になることで、世の中を変えられる可能性があるからです。

たとえば、高齢者が自動車を運転して事故を起こすと、最近の風潮としては、免許の返納のことばかりが議論されます。でも、そればかりではなく、高齢ドライバーに向けた、車の安全装置の開発や販売、あるいは自動運転の普及を進めるチャンスと考えるべきです。やはり高齢者が多いスウェーデンに本拠を置く自動車会社ボルボなどが、自動車の安全性や自動運転の機能をどんどん進化させているのに対して、日本ではあまり進んでいないのが現状です。

私が自動車メーカーの社長なら、高齢ドライバーができるかぎり免許を手放さずにすむように、「うちは○年以内に、絶対に事故を起こさない車をつくります」と宣言するでしょう。

いまは、IT(情報技術)の時代からAI(人工知能)の時代への転換期です。

ITの時代は、人間がITを使って何がつくれるかを考えないといけないし、ITの使い方を身につけなければなりませんでした。AIの時代は、AIが人間のニーズを察して何をつくるかを考えてくれますから、消費者の要求水準が高い国ほどいいものがつくれるのです。

高齢者が「買う」ことで世の中が変わる

人口の多い高齢者が現役のドライバー、現役の自動車の消費者であり続けることで、よりクオリティの高い車が生まれる可能性が高まります。また、海外も高齢化が進むので、そういう商品は国際競争力が高いといえるのです。

高齢者が現役の労働者である以上に、現役の消費者であり続けることにはきわめて大きな意味があります。

たとえば、いまファッション雑誌は50代以下に向けたものがほとんどですが、高齢者がファッションの消費者でありつづければ、70代や80代をターゲットにしたファッション雑誌が創刊され、雑誌業界自体も活気づくことになるかもしれません。

「貯める」だけでなく「使う」という選択

お金をもっているのに使わない高齢者が、日本にはたくさんいます。たとえば、「将来どこかに寄付をするなど、何か使う目的があってお金を貯めるのはいいと思います。

でも、預金通帳の数字が増えていくのがうれしいとか、子供に1円でも多く財産を残したいとか、そんな理由でせっせと貯金をしたところで、結果的には、ただの「ケチ老人」としてあの世に行くことになります。

資産家を否定するつもりはありませんが、日本の不景気を考えると、お金を貯め込むだけで使わない人間は、私からすると害虫以外の何ものでもないと思います。お金は使うために稼ぐものであって、貯めるために稼ぐものではありません。

かつてのように、みんなが貯めたお金を銀行が企業に貸し、それで経済がまわっていた時代ならともかく、いまは銀行がお金を貸す相手がなかなか見つからず、貸したとしても利息がろくにとれないので困っている状況です。銀行のATMで時間外にお金を預けようとすると、当然のように手数料をとられます。

誤解されがちですが、資本主義社会においては、お金をもっている人よりも、お金を使っている人のほうが偉いのです。つい最近まで中国の国際的な影響力が強くなってきた最大の理由は、当時の中国が世界でもっともお金を使う国になったからです。

ウイグルにしても香港にしても、中国の人権侵害についてそれほど強い経済制裁ができていないのも、北京オリンピックの際に実際のボイコットでなく、外交ボイコットという中途半端なかたちになったのも、欧米(とくにヨーロッパ)諸国が中国にモノを買ってもらえないと自国の製造業に大きな影響が出ると考えたからではないでしょうか。内需を縮ませるばかりのコロナ対策はようやく終わりましたが、日本の不景気は、今後さらに深刻化するのではないかと心配しています。

いま、日本の個人金融資産は2000兆円超にのぼり、そのうちの実に7割は60歳以上の人たちがもっているといわれます。高齢者が国に対していちばん役に立てることは何かといえば、それはお金を使うことにほかならないと私は思います。

『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』(和田秀樹/PHP研究所)
『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』(和田秀樹/PHP研究所)

著者:和田 秀樹(精神科医)
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、35年近くにわたり高齢者医療の現場に携わっている。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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