
定年後も働くかどうかを考える際、「いくら稼げるか」という給与ばかりに目が行きがちです。しかし、実は「どの健康保険に入るか」によって、手元に残るお金が数十万円単位で変わることをご存じでしょうか。
働き方によっては、国民健康保険料と会社の健康保険(社会保険)で保険料に3倍以上の差がつくケースもあります。さらに、万が一の病気やケガに備える保障の手厚さにも大きな違いが生まれます。
本記事では、社労士みなみさんの著書『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』(アスコム)より一部抜粋し、定年後の手取りを増やすために知っておきたい「会社の健康保険の大きなメリット」について解説します。
会社の健康保険は保険料が大幅に安くなることも
健康保険には、年金受給者や自営業者が加入する国民健康保険(国保)と、会社の健康保険(健康保険組合や協会けんぽ)がありますが、一般的に会社の健康保険のメリットが多いといえます。
老後の生活においてなんといっても大きいのは、保険料の差です。
具体的な例を挙げてご紹介しましょう。働いた分の年収が106万円で、年金が220万円で合計の年収が326万円だったとします。
この場合、社会保険に加入している人の保険料は、単身の人で年5万2800円。一方、2024年度の横浜市の国民健康保険料で試算すると、健康保険料は年18万7970円です。なんと3倍以上の差です。
国民健康保険と差がつく理由とは

なぜ、こんなにも差があるのかというと、協会けんぽや健康保険組合に加入している人は、働いた分の収入(106万円)だけが保険料計算の対象になるからです。そして、なんといっても大きいのが、保険料の半分は会社が負担してくれることです。
一方、国民健康保険の人は、働いた収入と年金のすべての収入(326万円)が、保険料算出の対象になります。
仮に、65~70歳までの5年間同じ収入だとしたら、会社の健康保険は26万4000円、国民健康保険は93万9850円、その差は、驚くことに67万5850円にもなります。大き過ぎる差ですよね。
夫婦の場合、夫は同じ条件で妻の年金が80万円とします。
会社の健康保険には扶養という概念があるので妻の保険料を負担することはなく、単身者と同じ5万2800円です。一方、国民健康保険は一人ひとりが被保険者なので、単身の場合よりもさらに高くなり21万9470円(2024年度横浜市の国民健康保険料で計算)です。
5年間の保険料総額は、健康保険は26万4000円、国民健康保険は109万7350円、その差はなんと83万3350円です。
健康保険組合は、組合ごとに保険料率が設定されています。中小企業が多く加入している協会けんぽは、同じ協会けんぽ内でも都道府県ごとに保険料率が異なります。国民健康保険の保険料は地域によって異なるのでこの数字は参考ですが、大きな差はありません。
病気やケガに備えられる「傷病手当金」
会社の健康保険でもう一つ見逃せないのが、傷病手当金です。傷病手当金とは、保険に加入している人が病気やケガで会社を休み、給与がもらえないときに支給されるお金です。
支給要件は、以下の3つです。
- 病気やケガのため、仕事につけず療養中である(医師の証明が必要です)
- 継続した3日を含み4日以上休んだとき(土・日・祝日を含みます)
- 給与が傷病手当金の額よりも少ない場合(その差額が支給されます)
どれくらいもらえるかというと、
- 直近1年間の月額平均給与の30分の1×3分の2×支給日数
ちょっと難しいので、分かりやすく具体例を出すと、平均給与が8万8000円だったとすると、1日あたり1955円になります。
例えば、欠勤日から71日目に復帰した場合は、先ほどの支給要件によると、最初の3日間が待期期間になるので支給期間は67日です。つまり、この場合は13万985円が支給されます。しかも、傷病手当金は国からの支給なので非課税です。最長1年6カ月分もらえます。
さらに、出勤と欠勤を繰り返した場合、出勤した期間を除いて通算1年6カ月支給されます。また、傷病手当金をもらっていても、在職中は、年金もまるまるもらえます。(退職後も傷病手当金の「継続給付」を受ける場合は、老齢年金との調整があります)
※編集部注:記事内の保険料試算は書籍刊行当時の保険料率に基づいています。国民健康保険料は自治体や年度によって異なり、現在の改定等により実際の金額と差が生じる場合があります。
この書籍の著者:社労士みなみ プロフィール
社労士YouTuberとして、年金をはじめとする「定年前後・老後のお金」をテーマに情報発信。YouTube登録者29万人。開業社労士として、企業型DC(企業型確定拠出年金)の導入支援、従業員向け投資教育、企業研修などを行い、企業と個人の両面から「老後のお金」の課題解決をサポートしている。専門的で難しい年金・社会保険・資産形成の制度を、生活者目線でわかりやすく伝えることを大切にしている。著書4冊。FP・社労士。






