暮らしのお金

「あー駄目だ。買えないよ」2980円の鰻で落ち込んで。遺族年金と清掃パートで暮らす71歳の節約生活

遺族年金とパート収入で暮らす71歳女性。物価高のなか、スーパーをはしごし、見切り品を探す日々が続く。それでも働き続けたいと願う理由とは。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

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物価高のなかで続ける節約生活 ※画像:PIXTA
物価高のなかで続ける節約生活  ※画像:PIXTA

物価高が続く今、年金生活者にとって日々の買い物は生活を左右する大きな問題になっている。

増田明利氏の著書『今日、年金暮らしになった 定年を迎えた17人のリアルな老後』は、当事者の声から年金生活の厳しい現実を描いた一冊である。

今回は本書から一部を抜粋し、遺族年金と清掃パートの収入でやりくりを重ねながら、前向きに現場に立つ71歳女性の日常をお届けする。【前後編の後編/前編から読む】

目次

取材対象者プロフィール

氏名:本山泰代(71歳・仮名)
現住所:埼玉県さいたま市
家族構成:なし、夫は4年前に病死
年金額:遺族年金13万5000円
その他の収入:ビル清掃パートとして8万円
住居形態:UR賃貸
維持費:家賃5万3000円
健康状態:特に問題なし

遺族年金13万5000円、パート収入で支える家計

収入的にはどうかというと、現在の時給は1300円。1日3時間勤務で月20日出勤すると7万8000円、欠勤なしなら皆勤手当2000円が出るのでピッタリ8万円。交通費も支給してくれる。

「8万円のうち生活費の足しにするのは2万円だけ、あとは貯金しています。いつかは働けなくなるわけだから、そのときの生活費の足しにするために」

遺族年金13万5000円とパート収入から2万円、計15万5000円が本山さんの1カ月の生活費。極端に少なくはないが何かと大変だ。

「一番大きい出費は家賃ですね。埼玉の古い公団団地(2DK)だけど家賃は5万3000円します。周辺の民間アパートよりは安いけど。今更ですがマイホームを持てればよかったなと思います。高齢になって住むところの心配なんてしたくなかった」

家賃の他に水道光熱費、通信費の合計が約2万円。自治体の国民健康保険、生保会社の疾病入院保険の支払いもあるので、生活費として残るのは6万4、5000円。やり繰りが大変だ。

風邪、腹痛、アレルギー、腰痛、肩痛、虫歯などで病院に3、4回通ったら1万円なんて簡単になくなってしまう。だから体調管理には注意している。

スーパーをはしご、物価高で続く節約生活

「食料品の値上げは困りものですね。1000円で買える量がどんどん減っている」レトルト食品、冷凍食品、カップ麺、インスタントコーヒー、調味料、缶詰、乳製品、お惣菜類、卵……。何もかも値上がりだ。

「お米も安くならないわね。最近はお米を食べることが少なくなりました。朝はパン、お昼は麺類ということが多い。おかず代込みで1食250円ぐらいでやっています。食パンもライフとか業務スーパーのPB品をよく買う。業務スーパーなら1斤90円で買えるんです。お米より格段に安い」

行きつけのスーパーで、たまにヤマザキのロイヤルブレッドが138円で売られることがあり、そのときだけは買うがやっぱり美味しいと思う。値段は正直だ。

「土用の丑の日にイトーヨーカドーに行ったのですが、鰻の蒲焼とか鰻重弁当の特設コーナーが設けられていて、ちょっと値段を見たら国産の長焼きが2980円だった。美味しそうだったけど、あー、駄目だ。買えないよと落ち込んだわ」

品物にかかわらず、基本的に買うのは安いもの。本日のお買い得品とか数量限定のシールが付いていないと買うのをやめることがある。

「だから日々のお買い物は、チラシをチェックしてスーパーを2、3店回ります。夕飯の後に、閉店前の見切り品を買うためにもう一度スーパーに行くことも普通にありますね」

だけど、前に比べると値引率が小さくなっている。以前は始めに3割引き、それでも売れ残っていたら半額になっていた。でも最近はまず2割引き、次に3割引き。半額シールが貼られるのは最後の最後。お店の方も大変なんだろうなと思ってしまう。

電気代も倹約の対象。まずお米は1回で5合炊いている。これを180gに小分けすると10回分になる。冷凍して食べるときにレンジで解凍、パンや麺類を食べることが多くなったから1週間分になる。

「昼間は在宅していても照明は点けない。部屋が5階で西日が当たるので、春分の日頃から10月上旬までは夕方5時近くでも明るいんですよ。お洗濯も週2回にして電気代と水道代を抑える。クーラーもストーブもできるだけ使わないようにしています」

以前だとニット製品はクリーニング店に出していたが、最近はネットに入れ、水流を弱にして洗濯機洗い。「セーターもカーディガンも古着屋で買った5、600円のものだから、2年ぐらい着られれば十分だもの」

倹約、倹約、また倹約で気疲れしてしまうので、毎月最終日曜日はスーパー銭湯に行って息抜き。施設内の飲食店で食事しながら軽く一杯やれば元気になった気になる。

「せいぜい3000円ですから、ささやかな楽しみです。これくらいなら罰は当たらないでしょ」

「できる限り働きたい」71歳女性が語る老後への思い

職場で最年長の人は男性が74歳、女性は73歳の人。全体の半分ぐらいが60代後半以上の人たちなので、高齢だから居心地が悪いということはない。

「雇用契約は75歳で終了なんですが、わたしも可能な限り働きたい。金銭的なことは勿論ですが、1人で家にこもっていたら老け込んじゃうと思うんです。やっぱり誰かと接点があった方がいいでしょ」

それにしても釈然としないのが遺族年金の少なさ。せめて75%ぐらいの割合にしてもらえれば経済的に助かる人が多いのに。

著者:増田 明利(ルポライター)
1961年生まれ。1980年都立中野工業高校卒。ルポライターとして取材活動を続けながら、現在は不動産管理会社に勤務。2003年よりホームレス支援者、NPO関係者との交流を持ち、長引く不況の現実や深刻な格差社会の現状を知り、声なき彼らの代弁者たらんと取材活動を行う。著書に『今日、ホームレスになった』『今日、派遣をクビになった』『今日から日雇い労働者になった』『今日、会社が倒産した』『本当にヤバイ就職活動』『今日からワーキングプアになった』『貧困のハローワーク』『今日、借金を背負った』『お金がありません』(いずれも彩図社)、『不況!!東京路上サバイバル─ホームレス、28人の履歴書』(恒友出版)、『仕事がない!―求職中36人の叫び』(平凡社)、『ホープレス労働─働く人のホンネ』(労働開発研究会)がある。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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